背番号10堂安律が“強気発言”で牽引し続けた訳 アジア杯の舞台裏にW杯の真実【現地発】
森保ジャパンはベスト8で大会を去った
森保一監督率いる日本代表は、カタール・ドーハで行われているアジアカップの準々決勝でイラン代表に敗れ、まさかの8強敗退となった。5度目の優勝を目指していたなかであまりに早い幕引き。大会を通して成長を遂げたMF堂安律(フライブルク)は悔しさを糧に這い上がる。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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あっけない最後だった。日本はイラン戦の前半28分にMF守田英正のゴールで先制し、リードして後半を迎えたが、後半10分に失点したシーンでは、FWサルダル・アズムンに縦パスが入った瞬間にDF板倉滉が相手MFに背後を取られ、同点弾を許してしまった。その後は白熱の攻防が続き、日本の守備陣もイランの猛攻に耐えていたが、後半アディショナルタイム3分、相手がペナルティーエリア内で頭で落としたボールを板倉とDF冨安健洋が譲り合うような形になり、相手DFにかっさわれたところを板倉が足をかけてしまってPKを献上。これを決められてしまい、敗退が決定した。
3大会ぶり5度目の優勝を目指していたなかで、ベスト8での終了。堂安は試合後、涙を拭ったあとのような表情で取材エリアに現れた。
「前回のアジアカップから(東京)オリンピックと(カタール)ワールドカップ、今回のアジアカップと何1つ代表で成し遂げ切れていない自分の不甲斐なさを感じる」
悔しさがひしひしと伝わってきた。今大会に懸けていた思い。大会中は言葉で牽引してきた。グループリーグ第2戦でイラクに敗れた際、「史上最強と言われているなかで、調子に乗るなと言われている感じもする」とチームに喝を入れた。
「優勝しなくちゃいけないチーム」
そう言い続けてきた大会。目標を言葉にして、発言し続ける理由を聞いた。「ビッグマウスとか言われがちですけど、本気で思って本気でやりたいと思って言っている」。先発を外れればベンチから声を掛け続けた。チームのために。自分の立場は関係ない。
「サッカー選手である前に、かっこいい男でありたい。生き方として、考え方として、昔の男に憧れるという。昭和の男みたいな考え方ですけど。不器用だけど背中で見せる。うちのオトンもそんな生き方の人なので、それは大きい」
カタール・ワールドカップ(W杯)前、最終予選でメンバーから外れた。「文句を言ってきた時期もあった」と話す堂安。カタールW杯でドイツやスペインの強豪と対戦する際に「相手はピッチ上の11人で戦っている。こっちは26人全員で戦っている」と鼓舞したという。その姿に森保監督も「本当にフォア・ザ・チームに徹してくれている。ギラギラを忘れたわけではないけど、チームのことを考えてくれている」と目を細めていた。今大会も同じ。5年前の前回大会とはまるで違う頼もしく牽引する男へと成長を遂げていた。
堂安のように発言でスイッチを入れられる存在は貴重。結果はついてこなかったが、北中米W杯に向けて「背番号10」の“大きさ”を改めて知ることになったアジアカップだった。