アジア杯で無念の8強、森保J現時点の理想布陣は? 代表OB「トップ下、SB、GK問題がある」【見解】

元日本代表DF栗原勇蔵氏の考える理想布陣は?【写真:ロイター】
元日本代表DF栗原勇蔵氏の考える理想布陣は?【写真:ロイター】

【専門家の目|栗原勇蔵】トップ下は田中碧のようなゴール前に顔を出せる選手が必要

 森保一監督率いる日本代表は、2月3日にカタールで行われたアジアカップの準々決勝でイランに1-2で敗れ、無念のベスト8敗退となった。2010年大会優勝に手が届かず、今後は2026年の北中米ワールドカップ(W杯)に向けてチームを作っていくことになる。今回のアジアカップも踏まえ、元日本代表DF栗原勇蔵氏に現時点での森保ジャパン理想布陣を組んでもらった。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 日本はグループリーグ初戦でベトナム相手に4-2で勝利。続くイラク戦で1-2とまさかの敗戦を喫するも、第3戦インドネシア戦で3-1と勝利し、グループリーグを2位で通過した。決勝トーナメント1回戦でバーレーンを3-1で下したが、準々決勝でイランに涙を呑み、タイトル獲得への道は閉ざされた。

 MF三笘薫やDF冨安健洋、MF久保建英がコンディションに不安を抱えて大会入りし、MF伊東純也が途中離脱とエクスキューズはいくつかあったが、ベスト8は物足りない結果と言っていい。

 1トップは今大会4ゴールを挙げたFW上田綺世が一番手だろう。FW浅野拓磨はバーレーン戦で決定機を外すシーンもあり、若いFW細谷真大は初戦のベトナム戦でチャンスをもらったが、結果を残せなかった。身体の強さやシュートの上手さを含めて、FWは上田を中心に回っていくだろう。

 2列目は、今大会では三笘がグループリーグ3試合は全休だったが、万全であれば左サイドの軸なのは言うまでもない。今後の鍵を握るのはトップ下と右サイドか。トップ下はMF南野拓実がベトナム戦で2ゴールを挙げたが、その後は左サイドにスライドされたこともあって失速。久保もトップ下より輝けるポジションがあると栗原氏は話す。

「久保はトップ下ではなく右サイドですよね。今の日本代表には、トップ下らしい選手がいない。相変わらず南野も苦しんでいる。右サイドは久保か堂安(律)のどちらか調子がいいほうを使えばいい。日本はボールを取られてすぐに取り返すみたいなプレスをしに行くやり方の時に強く、遅攻で勝てるチームではまだない。身体が強くて前を向ける、スイッチを入れる選手が必要なのかもしれない」

 では、トップ下は誰が理想か。パスを出せるMF鎌田大地も一案だが、栗原氏は「田中碧がいればなと思うシーンはありました」とMF田中碧を押す。

「田中碧はパワーがあって球際も強いし、ゴール前にも顔を出せる。相手のバランスを崩せる選手は必要。伊東とか三笘が縦に行くから相手の守備にもスペースができるけど、堂安や中村(敬斗)は中に入っていくことが第一。横の距離を空けないで守備ができてしまうので、対戦相手も守りやすかったはず。縦に行けて、ディフェンスとディフェンスの間がカバーに行けないぐらいの距離になるくらい空いてくれると中も空いてくるし、田中碧とかのほうがいいと思います」

GKは鈴木彩艶の継続起用を推奨

 ボランチはキャプテンを担ったMF遠藤航とMF守田英正が主体となるだろうが、栗原氏は「守田とか足を動かせる選手は大事。遠藤も頑張ってはいたけど、冨安(健洋)のほうが気迫が見られた。遠藤は経験を持っている選手だけに、自分のことをやっているだけでいいという存在ではもうない。佐野海舟に頑張って欲しいですよね」と見解を述べた。

 最終ラインに関しては、DF板倉滉はイラン戦で2失点に絡んだとはいえ、コンディションさえ良ければ冨安とともにセンターバックの中心だろう。サイドバック、特に右サイドに関してはDF菅原由勢に代わってDF毎熊晟矢が株を上げた。

「毎熊が出てきたのはプラス。調子次第ですけど、毎熊のほうが調子の波が小さく、より考えながらプレーしている。菅原も悪くはないとはいえ、安定しているほうを使うのが良さそうです。第2次政権では左サイドがなかなかハマらないですよね。伊藤(洋輝)は前を向いても出せないから横パス、うしろのパスとなるから、中山(雄太)のほうが前に出そうという気持ちがあって周りも動きやすいはず。オーバーラップしたり、クロスを上げることもできる。冨安は今大会もさすがだなと思うことが何度もありました。板倉はイラン戦で闘う気持ちが少し欠けているように感じられたので、今後の奮起に期待します」

 そして、森保ジャパンの鍵を握るポジションの1つである守護神には、栗原氏はアジアカップで課題に直面したGK鈴木彩艶を指名した。

「サイズとか将来性を考えれば、彩艶を使いたくなるのは分かる。ここまで引っ張ったわけなので、ぜひ育て上げてほしい。シュミット・ダニエルとかもいますけど、アジアカップのタイトルを獲りに行くという理由ならまだしも、次のW杯を見据えてとなると、疑問符が付きます。ただ、彩艶があれだけ不安定だったので、何かあった時にアドバイスができる経験のある選手、ないしはベテランが1人ほしいですね」

 森保ジャパンは3月にW杯アジア2次予選で北朝鮮とホーム&アウェーで2連戦を戦う。森保監督がどのようにチームを作り上げていくのか、手腕が問われることになる。

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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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