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目指すは「世界一のサッカー研究機関」東大サッカー部発 データ分析特化のチーム創設【インタビュー】
エンジニアリングユニット発足「高度なデータを扱うには、大学院生の力が必要だった」
ベルギー1部シント=トロイデンVVとの提携など、近年先進的な活動を見せる東京大学運動会ア式蹴球部(体育会サッカー部。以下、ア式蹴球部)は先日、新たにデータ分析に特化したチーム「エンジニアリングユニット」を創設したことを発表した。
ア式蹴球部では、サッカーの競技面以外にも力を入れており、さまざまな「ユニット」と呼ばれるチームを作って活動している。資金獲得を目指すユニットや国際的な取り組みを行うユニットなど、活動の幅は多岐にわたる。
そのうちの1つとして、すでにア式蹴球部には、相手チームのスカウティングを行い勝利に貢献する分析チーム「テクニカルユニット」が存在し、サッカー雑誌への寄稿やベルギー1部シント=トロイデンVVとの提携など目覚ましい活動を行っている。そこから新たに独立を果たした今回のエンジニアリングユニット。一体どのような経緯で独立へと至り、どのような活動を行っているのか。今回はエンジニアリングユニットの創設者、王方成さん(東京大学4年)に話を伺った。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
◇ ◇ ◇
エンジニアリングユニット創設者の王方成さんは、現在学部4年生だ。学部時代はア式蹴球部に所属し、データ分析に日々もがいていた。そんななか、学部生の知識だけではどうにもいかない壁にぶつかることもあったという。
「データ分析自体はア式蹴球部でも行っていましたが、学部の1、2、3年生が高度なデータを扱って有用な分析を行うには限界がありました。東大にはデータ分析の分野で自分たちの何倍もすごい修士や博士のエンジニアがいるので、そういった方々の力を借りることはできないかと思ったのがきっかけです」
実際に大学院生へ呼びかけを行ったところ、意外にも多くの反響があったという。
「実際に行動に移してみて、大学院生とコミュニケーションを取ってみると、意外にもサッカーのデータ分析に関わりたいと言ってくれる方が多かったんです。でも現状の部活ではなかなか大学院生を巻き込んで行えるチームがなかったので、そういった方々の受け皿になる、という意味でも、新しくデータ分析に特化したチームを作る必要があるなと思いました」
そのような経緯で発足したエンジニアリングユニットには現在16名が所属しており、そのうち修士課程、博士課程がそれぞれ3人ずつ、計6名所属している。
「日本がW杯優勝を本気で目指すなら、データ分析でも世界一になる必要がある」
昨年1月に始動したエンジニアリングユニットは、すでに多くのプロジェクトに取り組んでいるという。
「主に、ゴールキーパーのトレーニングを支援するシステムを作成しています。動画を撮影し、動きを抽出し、機械学習の技術を使ってデータ化して練習のフィードバックを行っています。また、選手のランニングを解析するアプリも制作中です。ランニングの速度やフォームを分析し、単眼のカメラで撮影するだけで解析ができるようなアプリを作っています。
現在はゴールキーパー、ランニングとサッカーの一部分を切り取ったプロジェクトを行っていますが、ゆくゆくはより複雑で入り組んだサッカー全体の事象を分析するような活動を行っていきます。実際に、Beproという分析ソフトから得た生データを使った解析も行っており、着々と準備を進めているという段階です」
東京大学の最先端の技術を使い、サッカー界の発展を目指すエンジニアリングユニット。そんな彼らの目標とはなんなのか。
「創設時に掲げたのは、世界一のサッカー研究機関を作るということです。自分自身、海外での事例を見聞きするなかで、サッカーとアカデミアが接近してきているなという感覚をここ数年感じてきました。実際、カタール・ワールドカップ(W杯)でも詳細なデータレポートが出されているように、データ革命の基盤は整いつつあります。なので日本がW杯優勝を本気で目指すなら、データ分析でも世界一になる必要があると考えています。それを実現し、日本サッカー界に貢献できるような組織を作っていきたいです」
ピッチ内外で大きな進化を続ける東京大学ア式蹴球部。今後のさらなる発展に注目だ。
(FOOTBALL ZONE編集部)