スキッベ率いる広島の“堅実スタイル” リーグ優勝も現実味…神戸&横浜FMとの差は?
【カメラマンの目】大分との練習試合で4-1の勝利を飾る
ミヒャエル・スキッベ監督が指揮するJ1サンフレッチェ広島は、派手さはないが堅実なサッカーでJリーグを牽引する存在となっている。
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その広島は1月31日に大分トリニータと30分×4本のトレーニングマッチを行った。前半部分は大分の出足の鋭い守備にチーム全体として劣勢となったが、次第に落ち着きを取り戻すと、2本目途中から広島得意の厳しいディフェンスが威力を発揮し、ペースを引き寄せていく。対人における勝負強さはさすがであり、後方の安定によって攻撃も活性化され結果4-1のスコアで勝利した。
特に3本目は大分のペースダウンもあって、最終ラインの選手が狙い澄ましたパスを中盤の選手に供給し、ボールを受けた選手は前線へと進出。ゴール前にクロスを上げてFWが合わせるという、サッカーの教科書に載せられるようなゴール攻略のセオリー通りのサッカーを見せた。
広島を再び強豪クラブへと導くドイツ人監督も、就任3年目を迎えてチームの完成度は高まり、リーグ優勝も現実味を帯びてきている。
広島の輝かしい歴史を作ってきたベテランの青山敏弘はリーグ優勝について「今の僕はクラブとサポーターとをつなげる存在だと思っている。ピッチでできることは限られているけど、それ以外のことでチームがまっすぐ向かって行けるような道を作れればと思っている」と静かに語った。
チームが成功を勝ち取るには、やはり12番目の選手であるサポーターの声援が必要になる。サポーターの思いを常に受け止め、そして広島をピッチ内外で牽引してきた男だからこその言葉だった。
そして、この広島の象徴的存在であるベテラン選手の目にもチームは完成に達していると言う。そして、こう付け加えた。
「十分に(優勝するだけの)力は持っているが、この試合に勝たなければならないという状況で突き抜ける勝負強さ、そうしたシーズンを通して勝ち続ける形を作らなければならない」
勝負所でのプレッシャーに打ち勝つ集中力を発揮するには、やはり精神的支柱としての青山の存在は大きいのではないだろうか。
CFにはソティリウ、D・ヴィエイラ、大橋がピッチに
敢えて欲を言えば、リーグ優勝を考えた場合、ライバルとなるヴィッセル神戸や横浜F・マリノスとの差はストライカーの存在だ。神戸には大迫勇也、そして横浜FMにはアンデルソン・ロペスという絶対的なゴールハンターがいる。優勝を争ううえで勝負を決定付けられる点取り屋の存在は不可欠だ。
大分戦でセンターフォワード(CF)を務めたのはピエロス・ソティリウ、続いてドウグラス・ヴィエイラがプレー。3人目に大橋祐紀がピッチに立った。
チーム全体でエンジンがかからなかったため、ソティリウは大きなインパクトを残せなかった。続くD・ヴィエイラは長身を活かしたダインミックなプレーに加え、サイドに流れてラストパスも供給する幅広い動きを見せたがノーゴールに終わった。
最後に登場したのは昨シーズン湘南ベルマーレでブレイクし、その得点力を評価されて広島に新加入した大橋。ハードワークで攻守に渡って前線で存在感を示したが、得点を記録することはできなかった。
広島はどこからでも得点を挙げられるチームとして完成しているが、ストライカーのポジションに入った選手の決定力がさらに上がれば、リーグ優勝はより現実味を帯びてくる。選手たちの勝ち切る強い気持ちとストライカーの覚醒が優勝へのカギだ。
(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。