日本失点の遠因は「中途半端な猫パンチ」 鈴木彩艶の飛躍にOB期待「今まさに絶好の機会」【見解】
【専門家の目|金田喜稔】GKのパンチングミスが失点の遠因「検証ポイントだ」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング17位)は、1月31日にカタールで行われたアジアカップ・決勝トーナメント1回戦でバーレーン代表(同86位)と対戦し、3-1と勝利した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、失点につながったGK鈴木彩艶のプレーを反省材料として挙げつつ、「日本代表として長らく活躍が期待される逸材」と評する鈴木が今まさにスケールアップを遂げようとしている姿に注目を寄せている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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バーレーン戦を振り返った金田氏は、「よく勝ってくれた」と代表チームの奮闘ぶりを称賛。その一方で課題にも触れ、「ピンチらしいピンチはわずかで、全体的に見ればある程度、日本が余裕を持って試合を支配できた。久保建英が2点目を取った時点で、ゲームとしては日本の快勝ムードという雰囲気も漂った。それだけに、その後の失点はいただけない」と言及している。
金田氏が反省材料に挙げたのは、日本の失点場面につながるプレーだ。相手が右サイドからクロスを入れてDF冨安健洋がクリアを試みる。ボールは日本のゴール前で高く浮かび上がり、鈴木がフリーの状態で飛び出してジャンプしながらパンチング。しかし上手くミートできずにボールがこぼれて相手の攻撃が続き、その流れから相手にコーナーキックを献上すると、失点につながった。
「日本の失点は鈴木と上田綺世が当たる形で生まれたが、それは問題ではない。むしろ、そこから1分ほどさかのぼり、GKのパンチングミスが失点の遠因であり、検証しなければいけないポイントだ。そこで相手の攻撃を断ち切れなかった結果が失点につながっている。一連の攻撃を防ぎ切れなかったのは日本の守備全体の課題とも言えるし、鈴木だけの責任ではないのは事実。一方で、鈴木がキャッチングかパンチングか一瞬迷った感もあり、結果的に中途半端な猫パンチのようになって攻撃を断ち切れなかったのもまた事実だ」
以前から鈴木のポテンシャルを高く評価している金田氏は「逸材」と絶賛する一方、今抱えている課題もズバリと指摘する。
「以前から繰り返し言っているように、鈴木は足もとの技術が非常に高いし、スローイングも一級品。サイズやフィジカルも素晴らしく、日本代表として長らく活躍が期待される逸材GKだ。試合全体で見れば随所で良さを見せているし、鈴木のポテンシャルは誰もが認めるところだろう。問題は安定感や信頼感だ」
鈴木が迎える試練の時「ここを乗り越えた時の進歩は計り知れない」
今大会の日本代表は鈴木が守護神としてフル出場を続けており、ベトナム戦(○4-2)、イラク戦(●1-2)、インドネシア戦(○3-1)、バーレーン戦(○3-1)と4試合で11得点6失点。クリーンシートはなく、守備の安定感に一抹の不安を残している。
「結局、フィールドプレーヤーからすると、何気ないクロスや浮き球でも不安が付きまとう形になる。そのプレーが失点に直結しなかったとしても、その後の流れから間接的に失点するケースは十分考えられる。今大会の日本は4試合すべて失点しており、そうした点も関係している。日本側の自滅的なプレーが遠因となって失点しているケースも見られ、チームも自覚している改善点だろう」
2月3日の準々決勝で激突する森保ジャパンの相手は強豪イランに決まった。
金田氏は「相手は当然日本の失点パターンを研究するだろう。そこでGKの対応にやや不安があると考えるならば、そこを突くような攻撃を徹底してもおかしくない。鈴木にしてみれば、そういう状況のなかで圧倒的な安定感や存在感を見せつけられるかどうかだ。試練と言えば試練だが、ここを乗り越えた時の進歩は計り知れない。守護神として、今まさにスケールアップする絶好の機会が訪れている」と分析し、鈴木の飛躍に期待を寄せている。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。