日本代表16選手…「圧倒的」「安定感に不安」なのは? 金田喜稔がバーレーン戦採点
【専門家の目|金田喜稔】嗅覚も光った毎熊は「圧巻」 冨安と板倉も見事な統率
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング17位)は、1月31日にカタールで行われたアジアカップ・決勝トーナメント1回戦でバーレーン代表(同86位)と対戦し、3-1と勝利した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した日本代表の16選手を5段階(5つ星=★★★★★が最高、1つ星=★☆☆☆☆が最低)で採点した。
◇ ◇ ◇
<GK>
■鈴木彩艶(シント=トロイデン)=★★★☆☆
全体としては決して悪くないが、安定感に不安を抱えるのも事実。日本の失点は、そこにつながる前のプレーが問題だった。鈴木がしっかりとパンチングでクリアできず、その流れから結果的に失点を喫した。
<DF>
■毎熊晟矢(セレッソ大阪)=★★★★★
圧倒的な存在感。日本の先制点の場面では、あのスペースに入り込んでる嗅覚がまず素晴らしい。そこでボールを呼び込み、最初からシュートをイメージしているトラップで見事な一撃を放った。ゴール自体は堂安が詰める形で決めたが、まさに毎熊が呼び込んだゴールだった。3点目にも絡んでいるし、圧巻のパフォーマンスだった。
■冨安健洋(アーセナル)=★★★★☆
勇気を持ってラインを上げながら守備陣を統率し、ラインコントロールも最後まで集中を切らさずに行っていた。オフサイドも奪っており、板倉との意思疎通も良好。個人の力強さも戻っており、安心してプレーを見ていられる。
■板倉 滉(ボルシアMG)=★★★★☆
これまでに比べればプレーの安定性は高く、最終ラインの強度も高く保った。冨安との呼吸も良く、ラインの上げ下げを小刻みにコントロール。ボールを放り込まれても慌てずに対応しており、相手FWにほとんど仕事をさせなかった。終盤に足を痛めたのは気がかり。
■中山雄太(ハダースフィールド・タウン)=★★★★☆
グループリーグではミスが散見され、攻撃のサポートも物足りなかったが、その点は改善されていた。攻守ともに落ち着いたプレーで不安な要素はなく、良い距離感で攻撃の機転にもなっていた。これを繰り返していけば左サイドバックの先発は堅いだろう。
■町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)=※時間短く採点なし
←後半35分IN
出場時間は長くないが、チームの高さを加えて守備の強度を高めた。今後の試合では逃げ切りたい展開、相手のハイボールを跳ね返したいという展開も出てくるなか、町田、冨安、板倉の3人であれば大抵の放り込みは跳ね返せるし、その手応えを得るのに十分な出来だった。
遠藤は自制的なプレーも役割遂行、チームを助けた堂安の一撃「執念が結果に」
<MF/FW>
■遠藤 航(リバプール)=★★★★☆
アンカーに入り、中央をカバーする役割や2列目との関係性も整理されていた印象。イエローカード1枚をすでに抱えていたなか、もう1枚もらって累積の出場停止にならないように、やや自制的なプレーに徹していたか。それでも中盤でバランスを取りながら、最終ラインの前で壁となりつつ、2列目攻撃陣もしっかりサポートするなど、自分の役割は遂行していた。
■旗手怜央(セルティック)=★★★☆☆
→前半36分OUT
負傷するまで、チームの潤滑油的な役割を担って機能していた。高い位置を取って攻撃陣と絡みながら打開を図ると良さが光る。より決定的なプレー、相手の急所をえぐるようなプレーをより期待したいところ。守備でも素早く切り替えて相手の攻撃を遅ら、身体を張るところで粘り強く対応していた。徐々に良さを見せ始めていただけに怪我での交代は残念。
■久保建英(レアル・ソシエダ)=★★★★☆
→後半23分OUT
自由に動き回りながら攻撃陣を生かそうと常に狙い続け、自分でも打開を試みていた。両サイドとの関係も良好で、局面に応じて相手の嫌なところを突こうとするプレーが光る。もう少し呼吸が合えばというシーンはあったが、徐々に良くなっている印象。ゴールは運もあったが、相手ゴール前に入り込んでいたからこそ生まれたもので、全体的に良い出来だった。
■堂安 律(フライブルク)=★★★★☆
→後半35分OUT
毎熊のシュートに反応し、絶妙なタイミングでこぼれ球を詰めて1ゴール。ゴールを欲する男の執念が結果につながった。この先制点で日本側はぐっと試合運びが楽になったし、チームを助ける一撃だった。久保と絡んだ時の閃きはやはり良い。毎熊と次もコンビを組めば、右サイドの連係はさらに良化していくだろう。
■守田英正(スポルティング)=★★★★☆
←前半36分IN
旗手の負傷で急きょ出場する形となったが、すんなりとゲームに入った。前線に攻撃参加する際のポジショングも非常に上手く、攻撃の流れを潤滑にしていた。久保との距離感も意識し、的確にボールを散らしていた。
■南野拓実(ASモナコ)=★★★☆☆
←後半23分IN
短い時間で見せ場はそれほどなかったが、それでもボールを呼び込む動き出しなどでは南野のらしさは発揮していた。
三笘は「まだこんなものではない」 ゴール量産の兆し漂う上田「頼れるストライカー」
<MF/FW>
■三笘 薫(ブライトン)=★★★☆☆
←後半23分IN
怪我明けで、まだ1試合を通じた体力や感覚は十分ではないのだろうが、それでも限られた時間でチャンスを演出していた。相手が相当警戒しているなかでもチャンスを作り出すのだから脱帽だ。とはいえ、本来の三笘はまだこんなものではないし、まだ試運転といった状況。これから本領発揮すると考えると期待感しかない。30分近くプレーできたのはチームにとっても好材料だった。
■中村敬斗(スタッド・ランス)==★★★☆☆
→後半23分OUT
正確な右足のキックを持つが、相手が相当警戒してシュートコースを消してきた。そのなかで周りを使って打開していたし、限られたチャンスでもシュート技術の高さを見せつけていた。相手が右足をケアしてくるなかで、局面を打破できる一手が出てくると確実にもう一皮むける。
■上田綺世(フェイエノールト)=★★★★☆
→後半35分OUT
背後への動き出しは多いが、出し手と呼吸が今ひとつ合わないのは課題。とはいえボールに多く絡めていたし、それだけ動き回って効果的に攻撃に絡めていた証拠。ゴールの場面では反転の仕方、身体の強さが際立った。見事な突破であり、あそこで強引に突き進めるのは上田の良さだろう。頼れるストライカーになってきたし、ゴール量産の兆しは好材料。
■浅野拓磨(ボーフム)=※時間短く採点なし
←後半35分IN
三笘の突破とパスからビッグチャンスになりかけたが、上手く足もとに収め切れなかった。チャンスに絡んだ点は評価に値するが、一方でチャンスを逃しているとも言える。今大会は、ちょっとしたところの呼吸が合わなかったり、ミスが出たりしてやや低調な出来。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。