冨安健洋が示す“指標”の変化 「会場の雰囲気を殺す」に隠された真実【現地発】
ベスト8を懸けた戦いが始まる
日本代表は1月31日にカタール・ドーハで行われているアジアカップ決勝トーナメント1回戦でバーレーン代表と対戦する。3大会ぶり5度目の優勝を目指す森保ジャパンを牽引するのはDF冨安健洋だ。ディフェンスリーダーは負けたら終わりの一発勝負前に「試合の会場の雰囲気を殺す」「相手に希望を与えずに」と発言。先発復帰を果たしたグループリーグ(GL)第3戦インドネシア戦(3-1)を前にも力強い言葉で引っ張ってきた冨安の“変化”に迫る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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誰よりも頼もしい男が今大会で大きな“変化”を見せている。感じられるのは日本に喝を、力を注入するという強い意思。バーレーン戦を前に冨安は「試合の会場の雰囲気を殺すというか、相手に希望を与えずに、スタートからエンジン全開でやる必要がある」と口を開いた。
インドネシア戦前にも出席した会見でも「相手の勢いに飲まれず、自分たちから仕掛け、叩きのめす気持ちでやりたい」と決しておごることなく、覚悟を言葉で表現した。
森保ジャパン第2次政権では昨年9月に初招集。カタール・ワールドカップ(W杯)以来となる代表復帰でいきなりドイツ戦に先発出場し、存在の大きさを知らしめた。ドイツ戦後にはプレーで示すことに意味があるとしていた。また日本代表でやれるのか、言葉の裏には不安があったことを感じさせた。
「価値を証明することでしかないですし、それは僕だけじゃなくほかの選手も含めて。代表から離れていた分、存在感が薄れていたというか、忘れられていた存在でもあったと思うので、そこをまた、欠かせない選手だっていうことを示す必要がありましたし、それは周りに対してもそうだし、自分に対してもそうだし。なので、しっかりと集中してやることはできたと思います」
昨年10月にはよりチームに対して「シンプルにアーセナルでやっていることを還元したいという思いが強い。それっていうのは、アーセナルで学んでいることがトップ、トップだと思っていますし、信じている。なので、そこを還元したいっていう思い。その思いが強いですね」と話し、ここから森保ジャパンにとって冨安は1つの基準になっていった。
最終ラインのレベルを1段階上へと引き上げて、日本代表が立ち返る場所を示す。これまでは強烈なリーダーシップと言っても「内」に対するものが多かった。それがこのアジア杯を通して「外」へも明確に発信することが増えた。
冨安の言葉にはチームが目指すべき場所が示されている。アウェーが予想されるバーレーン戦ではイラク戦のように相手の雰囲気にのまれることなく誇りを胸に堂々とプレーすること。これがピッチ内外を含めた指標だろう。
前回大会は20歳だった冨安が5年の時を経て欠かせない存在になった。日本代表は大丈夫。この男はこれからもそれを証明し続ける――。