日本代表の中継問題 サッカー界の未来をOB危惧「16強も地上波なしは悲しい」【見解】

日本代表の中継問題に金田喜稔氏が言及【写真:ロイター】
日本代表の中継問題に金田喜稔氏が言及【写真:ロイター】

【専門家の目|金田喜稔】放映権高騰の余波も…「子供たちのために」の願い

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング17位)は、1月24日にカタールで行われたアジアカップ・グループリーグ第3戦でインドネシア代表(同146位)と対戦し、3-1と勝利した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、「グループリーグ突破を懸けたゲームが地上波で中継されない寂しさを感じた」と語り、サッカー界の未来を危惧している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 インドネシア戦後、金田氏は悲しげに口を開いた。

「第2戦は地上波中継があったものの、格好の機会でサッカーファンに勝利を届けられなかった。そして今回の第3戦、グループリーグ突破を懸けたゲームが地上波で中継されない寂しさを感じた。次の16強も日本戦の地上波中継はない。DAZNでの配信があるのは救いだろう」

 今回のアジアカップでは、スポーツチャンネル「DAZN」が日本戦を含む全51試合を配信する一方、地上波ではテレビ朝日系列でグループリーグ第2戦のイラク戦と準々決勝、準決勝、決勝の最大4試合(日本が勝ち上がった場合)を放送予定となっている。

「やはり根本の原因は、世界的に起きている放映権の高騰だろう。とりわけ欧州では顕著だが、アジアでも傾向は同様だ。それを考えると厳しい情勢のなか、DAZNやテレビ朝日はかなりの企業努力をして、どうにか日本のサッカーファンに試合を届けようとしてくれているのだから感謝しかない」

 金田氏が気にかけているのは、今回のインドネシア戦だけではない。決勝トーナメントに進出した日本は1月31日の16強でグループE・1位のバーレーンと対戦するが、地上波中継は予定されていない。

「16強でも地上波中継なしという状況は悲しい。DAZNで配信してくれるから見る手段はあるわけだが、それでも地上波がないとライト層との距離がどうしても離れてしまう感は否めない」

 金田氏は放映権高騰の余波を受けている昨今の現実を理解しながらも、サッカー界の未来を危惧する。

「やっぱり子供たちが簡単に試合を見られるような環境であってほしいという思い、子供たちのためにという思いは強い。なぜなら、これからのサッカー界を背負うのは子供たちなのだから、子供たちに届けること、そして見てもらうことはすごく大事だ。もちろん配信サービスで見られる子供もいるし、できればサッカーに興味を持つすべての子供に見てもらいたい。ただそうは言っても、現実的には見られない子供も出てくるかもしれない。環境の差と言えばそれまでだが、知恵を絞って解決策を見出さないと、サッカーの人気やサッカーの未来が尻すぼみになるかもしれない」

 高騰する放映権問題は今後も付きまとうことが予想されるなか、日本サッカー界は解決の糸口を探りながら粘り強く向き合っていく形になりそうだ。

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金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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