長友佑都と同じ道を歩む現役慶大生Jリーガー 評価急上昇中の若者をプロ入りへとかき立てたもの
一度はサイドバックにコンバートも直訴して前線へ
武藤のその手のエピソードには枚挙にいとまがない。1対1の勝負では、相手が上級生だろうと、気後れせずに仕掛けた。たとえボールを奪われようとも何度も何度も挑み続けた。いまの鋭い突破と、思い切りの良いシュートに、胸がすくような痛快さを感じるのはそのころの原体験が起因しているのだろう。
そして、小学4年でFC東京のサッカースクールに通い始め、そのままFC東京U-15、U-18と順調にステップアップしていく。高校時代を指導した倉又寿雄(現・日体大監督)は、頬を緩めたある思い出を語った。
倉又は当初、武藤の身体の強さと、ボールを運ぶ推進力に目をつけ、彼をサイドバックへとコンバートした。しかし、最終学年となったある日、武藤は指揮官に直訴したのだ。
「今年1年間、前線のポジションで勝負させてください」
倉又は驚いた。「そんな選手は今までいなかった」と頬を緩め、本人の意志を尊重した。
攻撃的なポジションに置かれた武藤は、メキメキと頭角を現した。ついにはトップチームの昇格候補にまで上り詰め、2010年2月の宮崎合宿への参加を勝ち取った。しかし、そこで知ったのは、華やかに映ってきたプロの厳しい現実だった。目の色を変えてポジションを争う周りの選手たちに、一歩後ずさりした。
「いつも周りは、すごくピリピリしていた。毎日、早く練習が終わってほしいとさえ思っていた」