吉田麻也、価値あるホーム初ゴール サポーターの支持を勝ち取った日
麻也ゴールの直後に巻き起こった大チャント、際立った存在感
ロングがエンドラインぎりぎりの左サイドから、ゴール前にふわっとしたループのクロスを送ろうとしたが、エバートン右SBコールマンがカットしてサウサンプトンのコーナーキックになった。
このCKをディビスが左サイドのコーナーから蹴ると、ボックス内、ゴール正面で相手DFディスタンが一旦ヘッドでクリアした。しかし、このクリアボールはPAボックスの外に押し出しただけ。ボールの落下点にはサウサンプトン右SBクラインがいた。
そこから、今季はイングランド代表にも初招集されたクラインが、ゴールを背に引き上げてきた吉田の足元へボールを送り返す。吉田は右足でワントラップしてから、コーナーを蹴って左サイドに残っていたディビスに向って左足でボールを戻した。すると次の瞬間にはすかさずくるっとターンして、バリーとベインズの真ん中を割ってゴール前へ飛び込んだ。
ディビスが右足で放ったクロスは手前のバリーをタッチの差で交わし、そのすぐ背後にいた麻也の左肩に当ってゴールに飛び込んだ。
「(クロスは)全然見えてない(笑)、(手前にいたバリーに)触られると思ったんで。それに合わせて、とりあえず体だけつっこんで……」
見えてはいなかったが、そこに麻也はいた。その執念がこのゴールを生んだ。
「ホームで決めたことなかったんで。やっぱいいですね。アウェイだとサポーターが少ないけど、ホームだと全体が湧くし、地響きみたいなのが一番すごかったと思います」
これはひいき目ではなく、3点目の麻也のゴールが一番スタンドを盛り上げた。
試合後クーマン監督は、興奮気味に「個々の選手がこれだけ魂を込めれば、それだけ幸運も舞い込む。本当に今日の我々はすごかった」と語ったが、この麻也のゴールはまさにそういう日本代表DFの魂が乗り移ったものだった。
自らスペースのない最前線でボールを扱う技術の高さを見せ、アシストしたディビスへのパスを放ったこともあるが、その直後に踵を返してゴールに飛び込んで行った日本代表DFの闘魂。そんな麻也の勝利に対する飽くなき姿勢に、サウサンプトン・サポーターがしびれ、この試合で最高の歓声を浴びせた。
Oh! Maya Yoshida!
麻也ゴールの直後に巻き起こった大チャント。連敗を止めたチームに先発し、だめ押し点を奪った日本代表DFは、このゴールでチーム内ライバルのポルトガル代表DFフォンテ、ベルギー代表DFアルデルバイレルトに負けない存在感を示した。
そしてなにより大きかったのは、このホーム初ゴールでサポーターの力強い支持を勝ち取ったことである。
【了】
森昌利●文 text by Masatoshi Mori
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images