吉田麻也、価値あるホーム初ゴール サポーターの支持を勝ち取った日
サウサンプトンの連敗ストップに貢献した吉田
吉田麻也がホーム初ゴールを決めた瞬間、セント・メリーズに地鳴りが起こった。
セレブレーションは、まるでウェイン・ルーニーのようだった。両手を広げて左サイドのコーナーポストに走り込み、両膝で滑り込んでからガッツポーズ。麻也の表情にはプレミアでゴールを決めた者だけに許される、至上の歓喜が刻まれていた。
試合前のサウサンプトンには問題が山積していた。リーグ戦4連敗を喫し、この4日前の12月16日に行われたリーグ杯準々決勝も、リーグ1(英3部リーグ)所属の格下シェフィールド・Uに0-1で負け、公式戦5連敗中だった。そんなどん底のチーム状態に拍車をかけるように、シュナイデルラン、ワンヤマ、ガルドシュ、コーク、ガラガー、ヘスケス、タジッチ、ロドリゲス等が出場停止、もしくは怪我で欠場。ホームとはいえ、強豪エバートン相手のリーグ戦、苦戦は必至という見方が戦前の英メディアの多勢をしめていた。
窮地に追い込まれたクーマン監督は、フォンテ、アルデルバイレルトに吉田を加えた3バックでエバートンに挑んだ。しかしこれもあくまでシュナイデルラン、ワンヤマというフィジカルなボランチ2人を欠いた緊急処置だった。それは試合後に吉田が、「(3バックでの練習は)昨日と一昨日の2回だけ」と語ったことでも明らかだった。
ところが、終ってみれば“6連敗はごめんだ”とばかりに結束を固めたサウサンプトン・イレブンが、気合い溢れる見事なパフォーマンス見せて3-0完勝した。
その中でも、ベルギー代表FWルカクをはじめ、ベテラン・エトー、そして今売り出し中のイングランド代表MFバークレーが躍動するエバートンを体を張って零封し、自ら起点となってだめ押しの3点目を決めた麻也は、文字通りこの勝利の立役者だった。
「上がる予定じゃなかったんですけど、ルカクが戻ったから、それに合わせてついていって。クロスを狙うとかわかんなくて。とりあえず中に入っていけば、点につながるなとは思ったんですけど。ヘディング空振りして肩に当たって(笑)。でも逆にフェイントみたいになったっていうか」
試合後、「あの得点を振り返って」といわれて、麻也はこう答えた。その無我夢中さが伝わってきた。
この試合、サウサンプトンの立ち上がりはそれほど素晴らしいものではなかった。慣れないフォーメーションで、おっかなびっくりといった印象だった。麻也も試合開始から20分間は「やりにくかった」という。実際、この時間帯はエバートンがポゼッションを支配した。
ところが、試合が進むごとに硬さが取れ、オウンゴールでラッキーな先制点を奪うと、サウサンプトンが好調時の自信を取り戻した。後半20分にはペレのゴールで2点目を追加。そして後半37分、麻也のゴールが飛び出した。