なぜ中国は「眠れる大国」のままなのか アジア杯GL未勝利の現状を母国記者が分析【現地発】

アジア杯のグループリーグを未勝利で終えた中国代表【写真:ロイター】
アジア杯のグループリーグを未勝利で終えた中国代表【写真:ロイター】

ワン・シャオルイ記者はヤンコビッチ監督体制の経験の少なさを指摘

 中国代表は1月22日、アジアカップのグループリーグ突破をかけて開催国カタールと第3戦で対戦した。試合開始から中国は前線からプレスをかけて猛攻撃。勝利への強い執念を見せた。

 ゲームはずっと中国ペースで進んでいたが、後半21分、カタールの交代出場選手2人が活躍する。アクラム・アフィーフがコーナーキックをペナルティアークに向かって蹴ると、ハサン・アル・ハイドゥスがダイレクトボレー。これが見事に決まってカタールが先制点を挙げた。

 結局これが決勝点に。中国は最後まで粘ったが、3試合を終えて2分1敗の勝ち点2、0得点1失点でグループ3位となり、決勝トーナメント進出は苦しくなった。

 中国紙「タイタン・スポーツ」のワン・シャオルイ記者は、サッカーに関して「眠れる大国」である中国の現状についてこう分析してくれた。

「今回のアジアカップにおける中国のパフォーマンスは、多くの人が期待していたものには及びませんでした。ただ、中国が新しくチームを作っているところだと認識する必要があります。アレクサンドル・ヤンコビッチ監督がチームを率いるようになってまだ1年足らずです。現在は経験の浅い段階です。強豪とのビッグマッチは少ないし、新旧選手の交代はあまりありません。チームがより高いレベルに向上するためには、アジアカップのような試合をもっと経験する必要があります」

 中国が力を発揮するようになるまで、どれくらいの時間がかかると思っているのか。

「チーム、特に代表チームを形成するには時間がかかります。少なくとも1年から2年はかかるでしょう。これが、中国チームが今回のアジアカップで特に満足のいくパフォーマンスを見せられない理由です」

高校リーグ、大学リーグの貢献度の違いも影響

 さらに、ワン記者は中国と日韓のサッカーの差がどこで付いているのか語った。

「中国サッカーと日本や韓国のサッカーとの最大の違いは、中国ではユース育成の成功率が比較的低いということです。これは大きな問題で、高校リーグ、大学リーグとプロサッカーがつながっていません」

 ワン記者は、日本の大学サッカーがどう日本サッカーに貢献しているのか調べているようだった。

「日本では、サッカーをやるために大学に行く人が多いですよね。しかし、日本の大学選手の、おそらく70〜80%はプロになりません。彼らは卒業後にサッカー関連の業界に行くかもしれないし、あるいは経営者や投資家になるかもしれない。経営者になってサッカーに投資することもあれば、サッカージャーナリズムのような関連した業界に行くこともあります」

 この大学サッカー経験者のその後が違うと言う。

「中国サッカーのトレーニングは、選手をサッカー選手に育てるだけです。その結果、サッカーの環境は非常に小さく、狭いリングです。本当の解決策は、中学生から大学生を育てることだと思います。今はプロサッカーと別カテゴリーのサッカーが密接にはリンクされていません。私は中国のサッカーが成功するためには、プロのサッカー選手を育成することだけではないと思います」

 いつも笑顔で親切なワン記者だが、カタール戦のあとはさすがに表情が暗かった。そして過去のアンダーカテゴリーの試合を振り返り、「あの結果がここにつながっているんだ」と悲しみを深めていた。

(森雅史 / Masafumi Mori)

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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