今の森保ジャパンは「馬鹿正直な戦い方」 日本代表OBが指摘した要修正点は?【見解】

グループリーグ第2戦でイラクに1-2で敗れた【写真:ロイター】
グループリーグ第2戦でイラクに1-2で敗れた【写真:ロイター】

【専門家の目|栗原勇蔵】イラク戦黒星を「気を引き締め直す」きっかけにすべし

 森保一監督率いる日本代表は、1月19日に行われたアジアカップのグループリーグ第2戦でイラクに1-2で敗れた。国際Aマッチ9連勝でカタールの地に乗り込むも、ベトナムとイラクに苦しめられ、思うように攻守が噛み合っていない。元日本代表DF栗原勇蔵氏は、「真面目な日本人らしい、馬鹿正直な戦い方をしている」と率直な感想を述べている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 日本は前半5分、サイドチェンジから右サイドを切り崩されると中央へのクロスをGK鈴木彩艶が弾いたところをFWアイメン・フセインにヘディングで押し込まれて失点。その後は攻勢を強めるも1点ビハインドのまま時間が過ぎ、前半アディショナルタイムにはカウンターからMFアハメド・アルハッジャージのクロスを再びフセインにヘディングで押し込まれ、2失点目を喫した。

 後半開始からDF谷口彰悟に代えて、DF冨安健洋を投入した日本。後半11分、左サイドを割ったMF伊東純也からのラストパスをFW浅野拓磨が中央で合わせようとしたところで相手選手のファウルによるPKの判定。しかし、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の進言でオンフィールドレビューが行われ、主審はファウルなしとしてPKも取り消しになった。

 その後、日本は後半16分にMF堂安律とFW上田綺世、同29分にFW前田大然とMF旗手怜央を投入して攻撃のギアを上げる。後半アディショナルタイムにセットプレーからMF遠藤航がヘディング弾を決めて1点を返したが、1-2で今大会初黒星を喫した。

 日本代表OBの栗原氏は、「ベトナム戦は大会初戦だし、相手も格下という油断があったかもしれないですけど、イラク戦はガチンコで勝負に行ってやられたので、まだまだだなと。アジア最強とも言われたなかで、気を引き締め直すことができるのが一番の収穫と言えるかもしれない」と、敗戦の中でのポジティブな要素を敢えて挙げた。

「アジアカップは選手の成長はもちろんですけど、優勝が最大の目標。実力差を考えれば、次のインドネシア戦を悲観する必要はないし、決勝トーナメントに進出できれば優勝するうえではグループ1位、2位で突破とかあまり関係ない。イラクに負けて、もう一度みんなが意思統一する機会としては良かったんじゃないでしょうか」

アジアで「断トツ」の評価は覆された

 森保監督はイラク戦後、「アジアというか、我々に対してどの国もモチベーション高くぶつかってきていると感じる。相手の対策、モチベーションを打ち破っていけるものをアジアカップで培っていかなければいけないと学ばせてもらっている」と、対戦国から警戒されている実感を口にした。栗原氏は、森保監督の戦術・采配に対する感想をこのように述べる。

「今、日本は力があるので、真っ向勝負、横綱相撲で勝とうと、真面目な日本人らしい馬鹿正直な戦い方をしていると思います。でも、大会になれば相手も日本対策を採ってきて、ストロングポイントを消されることが当たり前になってくるので、いつものようには上手くいかない。上手くいかなくなると、『どうせまたつながらないんだろう』『またそこでミスが起きるんだろう』と、いつもより一歩二歩走らなくなったり、サポートの位置が悪くなる。そうすると、距離感が遠くなって、攻撃の精度も下がっていく。相手も乗ってきて出足が速くなるし、どうしても相手のほうにボールが転がるのは必然になってくる。これだけ欧州組が増えているにもかかわらず、この雰囲気に呑まれる。一番取られちゃいけない、開始5分とラスト5分に失点している。中東アウェーの難しさを再認識した」

 日本は昨年6月から年内は国際Aマッチ8連勝。9月の欧州遠征では、ドイツやトルコという欧州の強豪も破った。誰が出ても、どこからでも得点が取れる層の厚さも示し、アジアの域を抜け出して欧州とも渡り合えるといった評価も受けたが、アジアカップに入って厳しい現実と向き合っている状況だ。栗原氏も、「アジアではもう断トツかなと思ったけど、全然そんなことはないと痛感した試合だった」と語る。

「日本人は真面目だから、どんな状況でも全力で戦う傾向にあるけど、イラクとか海外の選手は場所とかでモチベーションでプレーの質が全然変わってくる。そして、サッカーは1試合、2試合で評価ががらっと変わる。『日本は世界とも対等に戦えるんじゃないか』みたいなことを言っていたのが嘘みたいなこの2試合の内容。何がそんなに違うんだろうと考え込んでしまうくらいです」

 1月24日のグループリーグ第3戦でインドネシアを破れば、日本は決勝御トーナメント進出の切符を掴める。森保監督がチームを立て直すことができるか、手腕が問われることになる。

栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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