日本のサッカー需要と人気低下の危機?  代表OBが懸念「最も避けたい悲しい結末」【見解】

アジア杯の地上波放送日と敗戦が重なってしまった日本代表【写真:Getty Images】
アジア杯の地上波放送日と敗戦が重なってしまった日本代表【写真:Getty Images】

【専門家の目|金田喜稔】イラク戦は「単なる1敗以上の意味合いを含んでいる」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング17位)は、1月19日にカタールで開催中のアジアカップ・グループリーグ第2戦でイラク代表(同63位)と対戦し、1-2で敗れた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、「代表戦の地上波放送がさらに遠のくかもしれない」と危惧している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 今回のアジアカップでは、スポーツチャンネル「DAZN」が日本戦を含む全51試合を配信する一方、地上波ではテレビ朝日系列でグループリーグ第2戦のイラク戦と準々決勝、準決勝、決勝の最大4試合(日本が勝ち上がった場合)を放送予定となっている。

 金田氏はイラク戦の敗戦を受けて、「グループリーグ3試合のなか、初戦のベトナム戦と第3戦のインドネシア戦は地上波で放送がない。そして今回、地上波で放送された第2戦で、思わぬ敗戦となった」と嘆く。

 2023年に連勝街道を走り、好調をキープしていた森保ジャパンだったが、「地上波が放送されたタイミングで敗れたのは痛恨だった」と金田氏は続ける。

「選手やスタッフにとっては、地上波放送の有無に関係なく、どの試合も大事な一戦で、ベストを尽くすのは変わらない。ただサッカー人気という意味では、多くの人が見たであろう地上波放送で敗北というのは、なんともタイミングが悪いのも事実だ」

 今回の敗戦を受けて、金田氏はサッカー需要と人気の低下を危惧する。

「客観的に見ると、今回の敗戦によってテレビ局のサッカー需要がさらに低下するのではないかと懸念している。圧倒的な強さを見せ、見る人を楽しませた展開とは言い切れなかっただけに、サッカー人気がさらに萎む可能性もある。そういう意味では、単なる1敗以上の意味合いを含んでいると思っている」

 イラクに敗れた日本代表はグループ1位通過の可能性が潰えた。24日の第3戦インドネシア戦は引き分け以上で2位通過となるものの、韓国代表がグループEを1位通過した場合は16強で日韓戦となり、早くも山場を迎える。金田氏は今後を展望し、最も避けたい結末について語る。

「イラク戦で久しぶりに日本代表の試合を見てみようと思った人は、ひょっとしたらがっかりしたかもしれない。サッカーを取り巻く環境を考えたら、さらに厳しくなった感もある。今大会のアジアカップで、このあと地上波でやるのは、日本が勝ち上がった場合の準々決勝、準決勝、決勝の3試合。仮に日本が16強で敗れたら、地上波放送は今回のイラク戦のみ。一般層にとっては、日本代表がイラクに負けた印象とともに、いつの間にか大会敗退というニュースが流れるだけという悲しい結末もあり得る」

 日本代表の優勝を強く望む金田氏だが、万が一の事態も想定し懸念を払拭できずにいる。

「日本代表は優勝候補と目されていながら、地上波で1勝も放送されることなくアジアカップを終えるかもしれない。そうなってはサッカー界にとって大打撃だ。サッカーの盛り上げには地上波放送も必要。日本代表の強さや面白いサッカーを見せないと、代表戦の地上波放送がさらに遠のくかもしれない」

 第3戦のインドネシア戦は引き分け以上で日本の2位通過が確定する一方、敗れた場合は他グループの結果次第で決勝トーナメント進出となり、場合によってはそのまま敗退の可能性もあるなか、文字どおりの負けられない一戦となる。

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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