森保J、歴史的敗北イラク戦の敗因を「深読み」 共通認識の“欠如”が生んだ最悪のシナリオ【現地発】
92年大会以降で初のGL敗戦
森保一監督率いる日本代表は、1月19日にカタール・ドーハで行われているアジアカップのグループリーグ(GL)第2戦で、イラク代表に1-2で敗れた。立ち上がり5分で失点し、前半終了間際にも追加点を奪われるという展開で、チャンスに転じた回数も少なかった。森保ジャパンの連勝は10でストップし、アジア杯がGL3試合制になった1992年大会以降、黒星を喫したのは初。また、イラクに敗れたのも1984年以来40年ぶりとなった。「ドーハの悲劇」再びとなった歴史的敗北の原因を深読みする。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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超満員のエデュケーション・シティ・スタジアムには大歓声だけが響き続けた。3万8000人を超えた会場は超アウェー。雰囲気にのみ込まれそうな前半5分、日本は右サイドを崩されると、中央へのクロスをGK鈴木彩艶がパンチングで弾く。この流れたボールをFWアイメン・フセインにヘディングで押し込まれてあっさりと失点した。さらに同アディショナルタイムにも右サイドを崩され、再びフセインにヘディングシュートを叩き込まれて前半に2失点を喫した。
日本はベトナム戦から先発を2人入れ替え。FW細谷真大をFW浅野拓磨、MF中村敬斗をMF久保建英に替えた。2列目は右から伊東純也、久保建英、南野拓実。まず南野を左サイドで起用したことで、左サイドバック(SB)DF伊藤洋輝の孤立を生んでしまっていた。流動的にポジションを変更してプレーできる3人ではあったが、前半にほとんど動かなかった理由を南野は「チームの中でも決めたところじゃなくて自由にというのがあったけど、こういう試合展開でうまく自分たちのペースでボールを握れていることが少なかった。だからこそ奪われた時のことを考えるとあまりポジションを変えないほうがいいと思った。タケ(久保)は真ん中でも1人で外せる。タケが1人剥がした時にダイアゴナルを意識していた」と説明した。
ただその結果、そもそもシュート数が少なかった。サイド攻撃でクロスからチャンスを作ろうとするも、ニアサイドへのボールはことごとく弾かれ……相手は高さ、スピードがあった分、攻めているように見えても決定的なシーンは少なかった。これに久保が答えを出している。
「前半は相手がルーズだった分、前半でちょっと違う攻め方をしたほうが良かったのかなと。後半になると試合が終わるにつれて相手も頑張るようになるので、一見固いように見えたけど、前半のうちに中から攻めたほうが良かったのかなと思う」
とは言っても、何よりも軽い2失点が悪すぎた。立ち上がり5分に先制点を許したものの、せめて何とか0-1で折り返せば後半につなげられただろう。DF板倉滉が「前半の途中で相手の疲れも見えていた。自分たちがボール保持するなかで奪われる形が悪くショートカウンターの形を作ってしまった。ああいうなかで0-1なのか2点目を取られるのかで違う。2失点目が大きな敗因だと思う」と話したとおり、2点ビハインドでハーフタイムに入ったのは最悪のシナリオだった。
MF堂安律も「この2試合、悪いなという時に失点し過ぎ。悪い時に耐えられていない。前半を0-1で終えるとか、途中出場にクオリティーの選手がいるから耐えて0-1で終えることを共通認識にできれば違ったと思う」と、アジア杯2試合で踏ん張り切れていない守備の軽さを指摘。欧州のトップでUEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場している選手も多く、コンディションの悪さもあったが、“日本対策”をいかに上回れるかが勝利を掴む鍵だ。
「日本代表は史上最強と言われているなかで、調子に乗るなと言われている感じもする。調子に乗らないようにやっていかないといけない。集中してやりたい」
堂安は試合後、こう話した。ロッカールームで下を向いている選手は1人もいなかったという。この敗戦が這い上がるきっかけになるように、「悲劇」を繰り返さないことが一番大切だ。