ベトナム戦は「説得力に欠ける」 日本代表、英記者が指摘する収穫と優勝への課題は?【コラム】
ベトナムの粘りに苦戦…セットプレーからの失点は反省材料
森保一監督率いる日本代表は、1月14日に行われたアジアカップのグループリーグ初戦でベトナムに4-2で勝利し、白星発進となった。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は、森保監督の選手起用を評価しつつ、課題も指摘している。
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日本代表のアジアカップの戦いが勝利で始まった。カタール・ドーハのアル・トゥママ・スタジアムで行われたフィリップ・トルシエ監督率いるベトナム代表との試合を4-2で勝利した日本だが、特に前半の出来は優勝候補という前触れを正当なものとするには程遠い内容のように見えた。
チーム内にあった過信は、間違いなく開始45分で解消されただろう。森保監督のチームは、2度のセットプレーで逆転を許してベトナムに自信を与えた。
最終的には、日本のクオリティーの高さと落ち着きが勝利をもたらした。南野拓実はアタッキングサードで強めている自信を示し、アジアカップでの挑戦で最初の勝ち点3をもたらす大きな役割を果たした。
しかし、この先の大会の中で、より強力な攻撃陣を持つほかのチームが突いてこようとするであろう欠陥も見られている。森保監督は、開幕戦の不安定なパフォーマンスから学ぶ必要がある。
監督は間違いなく、南野の活躍に元気づけられているだろう。南野は、中央の役割を与えられたことで再び開花した。だが、それ以外の攻撃陣でスタメン出場した選手たちの組み合わせは、有利な結果を残せなかった。
ベトナムは最終ラインの背後にほとんどスペースを与えてくれなかった。伊東純也の効果は低くなり、中村敬斗は三笘薫が欠場したなかで、再びチャンスを与えられるパフォーマンスができたか疑問を持っているだろう。細谷真央は残念な出来だった。
開始直後はすべてが順調そうだった。南野が前半11分に挙げたゴールで、日本は勝利へ進み、余裕のある勝利で挑戦をスタートさせるように見えた。ところが、ベトナムの粘りと意志の強さ、そして日本のセットプレーに対する残念なパフォーマンスが、そのようにならなかった。
試合のテンポをコントロールした点は評価に値する
トルシエ監督は試合前日に自身の意図を口にしていた。それは日本を「邪魔」して「破壊」するというものであり、最近の試合で相手を破ってきた森保監督のゲームメーカーたちに、落ち着いてリズムを作らせなかった。
しばらくの間、それは機能した。前半33分にファム・トゥアン・ハイの逆転ゴールによってベトナムがリードを奪ったが、日本は押し込まれて危険にさらされていた。
グエン・ディン・バクが脅威を与え、日本は対応に苦労していた。このウイングは前半の途中に遠藤航を股抜きしたが、このプレーは見事な超絶技巧であったと同時にチームメイトたちに自信を与える効果もあった。ループヘッドでのとんでもないベトナムの1点目を決めたディン・バクは、日本にとって厄介な存在であり続け、彼のスピードは菅原由勢に問題を起こさせ、2点目にもつながった。
最終的には遠藤の存在感が増し、南野の同点弾で試合を振り出しに戻したことで、日本はベトナムの希望を握り潰した。リードを確保した森保監督率いる日本代表は、過小評価されている資質の1つを示した。圧倒的なポゼッションによって試合のテンポをコントロールし、後半は試合からすべての脅威を取り除いたのだ。
後半になるとベトナムはほとんど何もできなかった。試合終盤の上田綺世のゴールは、フェイエノールトのFWが攻撃陣に加えるクオリティーを示した。苦しんだ細谷とは対照的だった。これはこの数か月の間、ドイツなどより名前の知れた相手に対して見せたパフォーマンスに比べて、説得力に欠けるものかもしれない。だが、後半に試合を締めくくった選手起用は、特筆に値する。
とはいえ、今、森保監督は弱点を最大限に活用してくる、より強い相手と対戦する前に、セットプレーの守備面のミスに対して確実に対応しなければいけない。
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。