5戦無失点からの5発完敗… またも優勝を逃した前橋育英35年目の指揮官が悔やんだ一撃
「準優勝だから胸を張って帰ろうと言ったが…」
山田監督はハーフタイムに、「3点目を取られたら終わりだから、前を向いて切り替えてやろう」とハッパをかけて選手を送り出したが、後半12、14、44分に3失点。2年生で編成した4バックが空中戦に競り負け、出足の一歩でマークが甘くなり、堅牢が崩れ落ちていった。
青森山田の黒田監督は決定力の高さを勝因の一つに挙げたが、次々にゴールを割られた守護神のGK月田啓は「相手は決定機をしっかり決めてきた」と舌を巻いた。
イレブンには生涯忘れられない惨敗となったが、全国4134校の2番になったのは立派だ。昨年6月の高校総体県予選では初戦の4回戦で常磐に足をすくわれたが、これをカンフル剤にしてここまで来た。ベスト8入りした前回大会も経験したMF大塚諒は、「あの初戦敗退があったからこそ準優勝できた。0-5は情けないけど、これから先の人生で辛いことがあったら、今日の悔しさを思い出して頑張りたい」と、主将らしい言葉で“タイガー軍団”のこの1年を総括した。
これまでに数多くの日本代表やJリーガーを育ててきた山田監督は、ドレッシングルームで「準優勝だから胸を張って帰ろうと言ったが、0-5(の大敗)を忘れてはいけないとも伝えた」と選手をいたわりながらも、きついお灸もひと言だけ付け加えた。
豪雪地帯の青森山田が初優勝したことで、冷たいからっ風の吹きすさぶ地域の前橋育英は、リベンジの気持ちを強めたことだろう。
【了】
河野 正●文 text by Tadashi Kawano
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