トルシエ会見にベトナム記者驚き 日本戦前に「こんな話とは思ってなかった」【コラム】
ベトナム率いる元日本代表監督の会見後、同国記者を直撃
ベトナム代表のフィリップ・トルシエ監督は1月13日、前日公式会見で日本代表を「この大会で優勝できるチームの1つ」と高く評価しながらも「日本と10回戦えば、9回は負けるでしょう。しかし1回は勝てます。それが明日起きるかもしれません」と、勝利を目指して戦うことを宣言した。
この会見をベトナムのメディアはどう見たか。会見後にベトナムのサッカー専門ウェブメディア「ボングダプラス」のフゥク・トラン記者は興奮を隠せない面持ちで「こんな会見になるとは思っていなかった」と語った。
トラン記者は会見の前まで、トルシエ監督に対して信頼を置いているとは言えなかった。むしろ疑問視していたといったほうがいいだろう。ところが会見を経て、彼は考えを少し修正したようだ。
「正直に言うと、私は会見でトルシエ監督がこんな話をするとは思っていませんでしたのでビックリしています。というのも、『ベトナムチームは負けるにしても0-1か1-2だ』というコメントをすると思っていたのです。ですが、トルシエ監督は勝点を取りに行く、驚かせると言いました。我々はトルシエ監督の言葉に勇気づけられました。今は、明日の試合でベトナムが日本代表に対してサプライズを起こせると思います」
ベトナム代表は2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップのアジア2次予選でイラク、インドネシアと同組になっている。そのためこのアジアカップの組の中でインドネシアに敗れることがあれば解任されるという噂も飛び回っていた。
それだけファンの気持ちを掴んでいたとは言えない状況だったが、この日の会見は離れていた人の心を掴んだようだ。そしてもし日本に対してサプライズを起こすようなことがあれば、しばらくは監督の座は安泰ということになるだろう。
もっとも、ベトナム代表も負傷者の多さに苦しんでいる。そのベトナム相手に日本が、いくら主力選手たちのコンディションが良くないとは言え、万が一でも後れを取るようなことがあれば、それのほうが問題は大きい。
「彼ら(日本代表)の邪魔をし、破壊し、ラインを断ち切り、自信を奪い、アグレッシブになり、問題を起こす」と明言している元日本代表監督には、しっかりと「勝って恩返し」しなければならないし、それができなければ「アジアカップ優勝」など夢のまた夢だ。
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。