なぜスタジアムの再利用は進まない? アジア杯開催地で見たカタールW杯の象徴「コンテナ」の今【現地発】

簡易宿があった「フリーゾーン」の再利用は順調も…
2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)で強調されたものの1つに、「サステナビリティー(持続可能性)」があった。その象徴とも言えるのが「コンテナ」を使った建造物。ファンが泊まる場所にコンテナを使った簡易宿を用意し、スタジアム974はコンテナ974個(国際電話をかける時のカタールの番号が+974)を使って簡易スタジアムとして建設され、W杯後には解体されて再利用されると報道されていた。
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果たして、現場はどうなっているか。2022年の時にコンテナの宿があった「フリーゾーン」は、ほぼ施設がなくなっていた。「SOLD OUT(売却済み)」の紙が貼られているコンテナもあり、順調に再利用が進んでいるようだった。
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それではスタジアム974はどうなっているか。2022年12月5日、ブラジル対韓国(4-1)がこのスタジアムで行われた最後の試合だった。すぐに解体が始まるということで12月13日に訪れて観た時の様子と、24年1月10日に同じような場所から写真を撮ってみたが、ほぼ変わっていないように見える。もう少し近づいてみると、同じ場所にフェンスが立っていて見にくくなっているが、ほぼスタジアムの様子は変わっていない。
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「フリーゾーン」に比べると、再利用は一切進んでいないようだった。
メディアセンターでカタール大会組織委員会のメンバーに話を聞いてみると、理由が判明した。もともとカタールでは「2022年カタールW杯」と今回の「2024年カタールアジアカップ(正式名称はアジアカップカタール2023)」をセットにして考えており、すべてはこのアジアカップが終わってから動き始めるということだった。
それならば、せっかく作ったスタジアム974を、W杯の7試合だけではなく、今回のアジアカップでも使用すれば良かったのだと思うのだが……。残念ながらその疑問に対する明快な答えは得られなかったが、「フリーゾーン」のコンテナがほぼ売れていることを考えると、案外買い手を見つけるのは簡単なのかもしれない。
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森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。