守備陣との連係ミスも「動揺ない」 鈴木彩艶が安定感に自信「このGKがいるから優勝できたと思われるようなプレーを」【現地発】
鈴木は冷静さと安定感に自信
過去のアジアカップで、日本代表のGKは数多くのドラマを作ってきた。1992年広島大会では準決勝で松永成立が退場になり、前川黛也(ヴィッセル神戸)の父である前川和也が急きょ守ることになった。
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2004年中国大会では準々決勝では、PK戦で最初に2人が外すという絶体絶命の状態から川口能活が魔神のような働きを見せて逆転勝ち。2011年カタール大会ではグループリーグ第2戦で川島永嗣がPKを与えて退場になるものの、残り8分で決勝点を奪う。川島は準決勝のPK戦で3-0と活躍し、名誉挽回を果たした。前回の2019年UAE大会も、ベスト16、準々決勝と1-0という緊迫し、GKには決してミスが許されない試合だった。
そんなGKの出来が勝敗を左右する大会において、日本の最後尾には、代表キャップ数4の鈴木彩艶(シント=トロイデン)、1試合の前川、まだ出場のない野澤大志ブランドン(FC東京)と経験値の少ない選手が並ぶ。
1月1日のタイ戦には、最も合流が遅かった鈴木が起用されたことを考えると、この大会でも鈴木が一番手ということになるだろう。
「過去の大会を見ても、川島選手が準決勝でPKを止めて活躍して、決勝で勝った試合もありましたし、やっぱりこういう大会で優勝するためには、GKの安定感と、そして厳しい時にいかにチームを助けられるかということが大事になると思っています。自分が試合に出たら表現したいと思いますし、このGKがいるから優勝できたと思われるようなプレーをしたいと思います」
経験の少ないGKにとって懸念されるのは、鈴木本人も大切だという「安定感」ということになるだろう。その点について鈴木は自信を見せる。
「基本的にはゲームの中でも、どんなプレーをしても、平常心を保ってプレーできますし、やっぱりGKにとっては落ち着きが味方への信頼というか、安定感を与えると思います。どんなゲームにおいても自分としては落ち着きと安定感あるプレーを心がけたいと思います」
2023年10月17日に行われたキリンチャレンジカップのチュニジア戦(2-0)、後半のアディショナルタイムで鈴木は冨安健洋(アーセナル)からのバックパスが合わず、転んでしまう場面があった。失点こそしなかったものの、もし相手が誰か詰めていれば無人のゴールに蹴り込めるという決定的なピンチだった。その場面のあとはどう感じていたのか。
「あのプレーのあとも自分としては動揺することなくプレーしています。ワンプレーごとに切りながら考えているので、そこまで動揺することなく、目の前のプレーに集中できていると思います」
過去のどんなGKに比べても恵まれている体格は大きな武器だ。鈴木は「この体格を生かして守備をしたいと思いますし、期待に応えられるように頑張りたいと思います」と意欲満々で答えていた。
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。