J1今オフ移籍動向の「当たり」補強は? FC東京、名古屋、川崎…“抜群の効果”期待の新戦力7選【コラム】
抜群の効果が期待できる7つの補強をピックアップ
2024年を迎え、J1リーグ各クラブの編成も佳境に入っている。今オフ、ここまで数々の移籍が成立されてきたなかで、ここでは筆者独自の視点で、抜群の効果が期待できる7つの補強をピックアップして紹介する。
■小柏 剛(FW/FC東京←北海道コンサドーレ札幌)
前線にディエゴ・オリヴェイラなど、パワフルなFWを擁するFC東京だが、スピードで掻き回す俊敏なストライカーは不足していたピースだ。小柏は大卒ルーキーだった2021シーズンに7得点。怪我で辞退となったが、日本代表にも招集された。飛躍が期待された昨年はまたも怪我に泣かされたが、それでも6得点。一瞬でディフェンスの背後を取る加速力とゴール前の落ち着きがあり、鹿島アントラーズから期限付き移籍で加入した荒木遼太郎と縦に並べれば、コンビネーションからの崩しも期待される。小柏の特長を考えるとウイングはお勧めしないが、4-4-2をオプションに組み込めばD・オリヴェイラや19歳のFW熊田直紀との併用も可能だ。
■三浦颯太(DF/川崎フロンターレ←ヴァンフォーレ甲府)
大卒ルーキーだった昨年は後半戦にブレイク。ACL(AFCチャンピオンズリーグ)などの活躍が目に留まり、元日のタイ戦でJ2からA代表デビューを果たした。高校時代まで攻撃的なポジションだったが、日本体育大学で、チーム事情によりコンバートされた左サイドバックが見事にハマり、そのまま飛躍につながった。縦への推進力は川崎でも大きな武器になるはずで、高い位置でボールを持てば、ウイング顔負けの鋭い突破を見せる。ビルドアップなどは川崎での伸びしろだが、マルシーニョや期限付き移籍から復帰した宮城天との相性も良さそうだ。復権を目指すリーグ戦はもちろん、ACLのノックアウトステージや秋にスタートするACLエリートで、爆発的な活躍が期待される。
■中山克弘(MF/名古屋グランパス←清水エスパルス)
昨シーズン後半戦の名古屋に足りなかった、サイドアタックに鋭さを加えてくれるタレントだ。縦の突破だけでなく、ゴールに向かう斜めのドリブルや飛び出しも得意。昨年5月のいわきFC戦ではMFながらハットトリックを達成した。しかも、攻守の切り替えなどもしっかりしている。連続性のあるプレーの強度が高い選手で、長谷川健太監督の求めるサイド像を体現するような選手。これまでのキャリアでは右サイドハーフが多めではあるが、縦のアップダウンが多くなる名古屋のウイングバックも十分に務まるだろう。
■中原 輝(MF/サガン鳥栖←セレッソ大阪)
昨季はC大阪から半年間の期限付き移籍先だった東京ヴェルディで、J1昇格に大きく貢献し一躍脚光を浴びた。そのまま東京Vへ残留するのか、保有元のC大阪に戻るのか注目されたなかで、鳥栖に完全移籍。右サイドが得意な左利きのアタッカーで、カットインからのシュートはもちろん、スルーパスなどでもチャンスをもたらす。セットプレーのキッカーとしても優れる中原はロアッソ熊本でプロキャリアをスタートし、モンテディオ山形でブレイク。C大阪での飛躍が期待されたが、壁に当たったなかで東京Vが1つの分岐点になった。新天地で羽ばたけるか注目される。
J2熊本で“才能開花”の平川、J1でのパフォーマンスは必見
■松田佳大(DF/京都サンガF.C.←水戸ホーリーホック)
今オフに京都が獲得したセンターバックの新戦力としては、清水エスパルスから加入した鈴木義宜がいる。経験豊富な31歳のディフェンスリーダーにはもちろん期待したいが、ここで筆者が紹介したいのが、もう1人の主力候補だ。松田は190センチのサイズとスピリットに溢れるディフェンスが目を引く23歳の新鋭。ルーキーだった昨シーズンは水戸から、J3のFC大阪に育成型期限付き移籍していた。そこで目覚ましい活躍を見せると、夏に水戸へ復帰。そこから一躍スタメンを掴んだ。京都の最終ラインでは井上黎生人が浦和に移籍、イヨハ理ヘンリーが古巣のサンフレッチェ広島に7シーズンぶりの帰還となり、再構築が急務となっている。アピアタウィア久など主力候補はいるが、大学4年の時点でオファーがなく、映像を送って売り込んだという“雑草魂”で、J1まで駆け上がってきた松田は京都に堅守とエネルギーをもたらすはずだ。
■ナ・サンホ(FW/FC町田ゼルビア←FCソウル)
J1初挑戦となる町田はオフに意欲的な補強を行っている。その目玉とも言える選手が、韓国代表経験があるナ・サンホ。かつてFC東京に2シーズン在籍したサイドアタッカーは爆発的なスピードが武器。右利きだが左サイドを得意としており、縦に仕掛けるドリブルに加えて、フリーランニングでワイドからライン裏に抜け出したり、一瞬でボックス内に飛び込むフィニッシュワークも武器としている。J1の舞台で町田の生命線となる、攻守の切り替えからの素早い攻撃を決定的なシーンに結び付けるか。清水エスパルスから加入が決まった長身のオ・セフンなどとのコリアン・ホットラインにも期待が懸かる。
■平川 怜(MF/ジュビロ磐田←ロアッソ熊本)
2000年生まれの“ミレニアム世代”のタレントで、17年のU-17ワールドカップではFC東京のアカデミー仲間でもあった、久保建英とのコンビが話題を集めたクリエイティブなタレントだ。プロ入り後は壁に当たり、鹿児島ユナイテッドFC、松本山雅FCでの武者修行を経て、完全移籍した熊本で“鬼才”大木武監督の指導と起用法で、創造性が開花した。視野が広く、1つのタッチで局面をガラリと変えられる平川は長短の正確なパスによるアシスト能力に加えて、ミドルシュートで得点を狙うこともできる。新天地の磐田では4-2-3-1のトップ下での起用が予想されるが、左のドリブラー古川陽介など、個性的なタレントをどう生かし、生かされてゴールに絡むのか、今から楽しみだ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。