堀越の快進撃、ベスト4で潰えるも「ここまで来れるぞ」 全国で抱いた自負「東京のレベルは低くない」【高校選手権】
東京A代表の堀越、同校初のベスト4で近江(滋賀)に1-3敗戦
第102回全国高校サッカー選手権準決勝が1月6日に行われ、堀越(東京A)が近江(滋賀)と対戦し1-3で敗退した。その試合後、会見に応じた堀越の佐藤実監督は近江の攻撃力の高さに苦しんだと語った。
「(近江は)個人の技術、前向きに入ってくること、選択肢の多い選手が多く、中盤で引っかける、止めることができずに加勢されてうしろから出てくる。近江さんの特徴、ストロングなところが出てしまって対応を考えている間に失点を重ねてしまった」と指揮官は落胆した。
もちろん近江対策は考えていた。「重心が下がってしまうと彼らのペースになってしまう。まずは4-4-2のゾーンでプレスバックをしてボールホルダーに(プレスを)かけていければ」と、プランを明かした。
ところが「初動の切り替えが遅く、ボールを持たれた時にスピードアップされた。どうしようかと思っていたところで失点が重なってしまった」と3失点した前半の戦いぶりを説明。圧倒された前半について「相手のシステムにやりたいことがマッチしていない」と判断し変更を加えた。
「うしろを3バックにし3-4-3のようにマッチアップさせてみる仕組みにしたほうが良いだろうと僕から提案しました」。佐藤監督によると「そのオプションもやっていたので違和感なくやれるだろうと」考えていた。「最後は3-5-2にして、相手のポケットやペナルティーエリア内に入る形を増やそう」と思い描いていた。
その結果「最後はいい距離感からPKを取って、中村(健太)が取った」と振り返った。そして選手たちには「前半0-3だったけど、後半は1-0だったんじゃないの」と伝えたという。
主将としてチーム牽引の中村を称えた指揮官「本当に成長した」
PKで堀越に1点をもたらしたキャプテンの中村について、指揮官は「本人もよく言ってるんですけど、ちょっとわがままで、ベクトルが自分に向いてしまうタイプの子だったんですけど、それが仲間の意見を聞き入れたり、仲間に自分ができないことを託していったりとか人間的な幅が相当広がって、実際にこの大会でも伸びている感じはしました」と評した。
ベスト4の壁を突破できず、決勝の舞台を前に大会を去った堀越。そのチームでプレッシャーがかかるキャプテンの大役を、周囲の支えを受けつつやり遂げた中村の今後に、佐藤監督は期待の眼差しを向ける。
「うちでキャプテンをやるのは相当な覚悟がないとできない。プレッシャーに押しつぶされそうにって時も何度もあるんですけど、色々な先輩が支えてくれたり、引っ張り出してくれたりとかしている状況で、本当に成長した。今後が楽しみ。彼の未来を、ほかの選手もそうだけど追ってあげたいなという気持ちでいます」
結果的には敗れたが「全国で4つ勝つのは半端じゃないこと」と選手たちが成し遂げた結果を佐藤監督は称賛。「彼らはよく相手を見ていて、ロッカーでもそういう会話が聞こえた。みんなで積んできたからここまで来られたので恥じることはないなと思う」と口にしている。
準決勝まで進出した意義を聞かれた佐藤監督は「僕らが所属している東京のTリーグの仲間たちと1年間リーグ戦を戦ってきて、ここまで来れるぞということはちょっとは見せられたかなと。だから、僕らが東京都の中でやっている戦いや予選は決してレベルの低いものではなくて、ほかのチームの子たちや指導者のみなさんにもなにか勇気や希望を与えることがこの結果で少しできたのかなというふうには思っています」としていた。
江藤高志
えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。