PKストップで傾いた青森山田への風 “生え抜き”GKの狙いと独特なルーティーン【高校選手権】
中学部から青森山田に所属する3年生GK鈴木が振り返るPK戦
青森山田(青森)は1月6日に国立競技場で行われた第102回全国高校サッカー選手権準決勝において、市立船橋(千葉)と対戦しPK戦の末に勝利。前半11分に先制しながらも試合終了間際の34分に同点弾を喫し、PK戦にもつれ込んだ展開だった。
市立船橋のPKを2本止める活躍で青森山田を勝利に導いたGK鈴木将永が頼りにしていたのは「自分が磨き上げてきた感覚」なのだという。
「自分は例えば過去のデータであるとかっていうところを頭に入れてやっても、なかなか上手くいかないと思っているので。何て言うんですかね。自分が磨き上げてきた感覚というか。そこを信じてやっている感じです」
その鈴木は、市立船橋の1人目、キャプテン太田隼剛のPKをストップすることで、市立船橋に傾いていた流れを取り戻せたのではないかと話す。
「7番の選手(太田隼剛)もキック上手いですし、そういった意味で、PKの1番手ということから考えても、そこを止められると流れにも乗れますし、非常に大きいものがあるかなと思ったので。実際に止められてまた流れたこっちに傾いたかなという風に思うので。そこは良かったかなと思います」
市立船橋は試合終了間際の同点ゴールで勢い付いていただけに、意味のあるPKストップとなった。さらに鈴木は市立船橋の4人目、岡部タリクカナイ颯斗のPKを弾き出す。その直前に青森山田の小林拓斗が止められていたが、鈴木は焦ることなく臨めたと言う。
「1本くらいはやっぱり止められるだろうなという感じの用意ではあったので。別に焦ることなく自分がただ止めればいいだけというところで、落ち着いて入れたかなと思います」
GKとして見せ場を作りチームを決勝に導いた鈴木だが、決勝の舞台では目立たない勝ち方が一番だと話す。
「チームコンセプトとして、キーパーが出番がないのが、一番いい勝ち方だと思います」
だから「自分がこういうプレーをしたいなという欲を出すんじゃなくて、チームとしてやることを徹底したなかで、でもその中でもいつ来てもいいような準備を自分の中でしたいというふうに思います」と決勝を見据えていた。
なお鈴木はPK戦時、相手選手と対峙する前に、交互に左右のゴール内にしゃがみ込んでいる。これについては「深い意味があるわけではないんですけれども、ただ自分が落ち着いて冷静にPKに入るための準備です」と話しており、PKに臨む際のルーティーンということらしい。
PK戦はGKにとっての見せ場だと言えるが、鈴木のそのルーティーンを見ること無く優勝することが鈴木にとって「一番いい勝ち方」ということになる。そんな青森山田が挑む決勝の相手は滋賀県代表の近江だ。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。