青森山田は「うちとは全然違った」 昌平の下級生が感じたレベル差…完敗でも「日本一狙える」と収穫強調【高校選手権】
青森山田(青森)に0-4で敗れ、初のベスト4進出を逃す
1月4日に浦和駒場スタジアムで行われた第102回全国高校サッカー選手権の準々決勝で、昌平(埼玉)が青森山田(青森)に0-4で敗れ、初のベスト4進出を逃した。埼玉県勢としても第71回大会の武南以来、31大会ぶりの準決勝進出はならなかった。
奈良育英(奈良)との1回戦は7-0で完勝したが、2回戦は後半アディショナルタイムに追い付いて米子北(鳥取)にPK戦勝ち。3回戦も2度先行されながら同点にしてPK戦をものにした。
高校生はこういう厳しい戦いを制すると自信が芽生え、逞しさを身に付けるものだが、今季プレミアリーグEAST初昇格の昌平は、優勝した青森山田に歯が立たなかった。
シュートは相手の半数にも満たない7本で、得点の可能性を感じさせたのは前半18分が迎えたFW小田晄平のシュートシーンの1度くらいだったろうか。
前半19分までに3点を力と速さでもぎ取られ、早い時間帯に大きなハンディを背負った。
プレミアリーグでの2度目の対戦は昌平が2点を先取したが、残り2分で同点にされた。村松明人監督は「あの時も立ち上がりから押し込まれたが、相手のミスに助けられてうちのペースになった。でも今日はゴールを奪われてしまった」と残念がる。
指揮官は3点目を失ってから間もなく、運んで仕掛けてマークをはがせるアタッカーを次々と投入。3試合とも途中出場だが3戦連続得点中の長璃喜、1回戦で先発した山口豪太という両1年生MFには経験を積ませるというより、劣勢に立たされた戦況を打開してもらうために起用した。
長は昨年3月、U-16日本代表のフランス遠征に参加。山口はU-16日本代表として一昨年5月のルーマニア、8月のウズベキスタン両遠征に中学生で唯一選ばれ、昨年は6月にU-17日本代表のアジアカップなどに出場した、ともに将来の日本サッカーを背負う才気煥発な1年生だ。
前半37分に送り込まれた長璃は、4試合目にして初めてシュートを1本も打てなかった。「青森山田は対人と空中戦と走力がすごくて、うちとは全然違った。でも技術とうまさでは勝っていたので、そのあたりを強化できれば日本一も狙えると思う」と大舞台での収穫を語る。
新チームからは中盤の大御所になることは間違いない。そのあたりは本人も自覚している。「3年生にいろいろ経験させてもらったので、今度は自分がチームを引っ張り、自分のゴールで勝たせるようになりたい」と言うと、幼い顔がきりっと引き締まった。
昨年6月に疲労骨折し、ベストの状態ではなかった1年生MF
後半22分から登場した山口は、右サイドでパスを受けて相手守備の切り崩しにかかった。同29分に左コーナーキックから惜しいヘディングシュート、同39分にも右から中央に入って強烈な左足シュートを放った。
昨年6月に疲労骨折し、完治した両足の裏が今大会開幕戦に痛み出し、ベストの状態ではなかった。「でももっとチームのために頑張らないといけなかった。(長)璃喜が凄かったので、自分も活躍したかった。悔しいですね」と話すと、「今のままで普通の選手で終わってしまう。普通でない、えぐい選手になって次の選手権ではチームを国立競技場に連れて行きたい」と捲土重来を誓った。
MF長準喜とのコンビで全試合にボランチで先発したのが、2年生のMF大谷湊斗。前回の全国高校選手権予選は決勝で初出場、しかも先発して決勝点を挙げた“もっている”選手だ。
1回戦では6点目と7点目の、2回戦ではアディショナルタイムの同点弾の起点となった。ドリブルでの仕掛けを得意とするMFだが、「今日は中央を固められてシュートも打てなかったし、仕掛けもうまくいかなかった」と振り返る。
中学時代は山梨のアメージングアカデミーで腕を磨き、昌平のサッカーに憧れてやって来た。兄の彩斗は前回大会準優勝の東山(京都)のメンバーだった。
「もうすぐ新しいチームが立ち上がりますが、もっともっと成長して(長)準喜さんのような1人で局面を打開できる選手になりたい。今回もまたベスト8止まりだったので、来年は兄を超えて優勝します」
新チームで攻撃の要人となるべき3人の決意は固かった。
(河野 正 / Tadashi Kawano)
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。