アジアカップのグループリーグは2位通過がいい? 森保ジャパンに期待するW杯を見据えた“逆境狙い”【コラム】

アジアカップ優勝を目指す日本代表の選手たち【写真:徳原隆元 & 高橋 学】
アジアカップ優勝を目指す日本代表の選手たち【写真:徳原隆元 & 高橋 学】

大会の試合時間は日本に追い風

 1月1日に発表されたアジアカップに臨む日本代表には、冨安健洋、遠藤航、守田英正、三笘薫、前田大然、久保建英など2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)メンバーが入り、森保一監督が今回の大会で真剣にタイトルを狙いに行っていることが示された。

 そのアジアカップで日本代表は1月14日にベトナム(2023年12月21日発表のFIFAランク:94位)、19日にイラク(同63位)、24日にインドネシア(同146位)と戦う。

 もしもFIFAランクどおりに行けば、日本はグループリーグ1位で通過し、ベスト16でヨルダン(同87位)と戦い、準々決勝でUAE(同64位)、準決勝でオーストラリア(同25位)、決勝でイラン(同21位)と対戦することになる。

 キックオフはすべて現地時間14時30分(日本時間20時30分)で、日本は1位または2位でグループリーグを突破すると、準々決勝まで同じ時間帯で戦うことができる。まるで優勝してくださいと言わんばかりに見える。

 だが、これまでのアジアカップを見ても、優勝した時ですらさまざまなアクシデントに見舞われてきた。1992年広島大会では準決勝でGK松永成立が退場になり、10人での戦いを強いられた。2000年レバノン大会では準決勝の中国戦で逆転勝ち、決勝も開始10分でPKを与えて(決まらず)、前半30分に奪った1点を守り切って優勝を果たした。

 2004年の中国大会では準々決勝のヨルダン戦にドラマが待っていた。1-1のままPK戦に突入すると、日本は中村俊輔、三都主アレサンドロが立て続けに外してしまう。だが主将の宮本恒靖がここで蹴る場所のグラウンドの状態が悪いことを主審に主張し、サイドを交代することに。そこから川口能活の奇跡のセーブが続いて準決勝に進出した。

 ところがその準決勝でも遠藤保仁が退場になり、2-3のまま試合終盤を迎える。すると90分を迎える直前に、中澤祐二がヘディングで起死回生の同点ゴール。そして延長でなんとか決勝進出を果たした。

1位通過のメリットは対戦相手が事前に判明しやすいということぐらい

 2011年のカタール大会は、グループリーグ2戦目のシリア戦でGK川島永嗣が退場になるものの、なんとか決勝ゴールを奪った。準々決勝のカタール戦で吉田麻也が2枚目の警告を受けて退場になる。だが粘って同点に追いつき、最後は内田篤人の累積警告で代わりに出場した伊野波雅彦がこぼれ球に詰めて逆転勝利を収めた。

 今回も当然いくつもアクシデントがあるだろう。だが、アジアカップでチームを成長させることを考えるのなら、ここはあえてアクシデントを起こしてはどうだろうか。

 もしも日本がグループリーグを2位ならほかのチームからは「アクシデント」に見えるだろう。実際、2位で突破すれば、日本代表には大きな試練が立ち塞がる。日本以外が順調にランクどおりの結果だったとすれば、ベスト16での対戦相手は韓国(同23位)。準々決勝の相手はイラン(同21位)、準決勝がカタール(同58位)、そして決勝の相手はオーストラリア(同25位)ということになる。

 つまり決勝トーナメントでアジアのランキング上位のチームばかりと戦うことができるのだ。カタールはランク58位と見劣りするかもしれないが、2019年UAE大会の決勝戦で1-3と敗れた相手。しかも何かハプニングが起きて負けたのではなく、日本を徹底的に分析され、プレスをハメさせず、完敗に追い込んだ相手だ。2019年決勝のリベンジも果たせる。

 日程的にも厳しくなる。1位の場合、グループリーグ第3戦からベスト16の試合までは中4日、だが準々決勝、準決勝、決勝までは中3日のサイクルになる。だが2位で抜けた場合、グループリーグ第3戦からベスト16までの日程こそ中6日になるが、準々決勝は中2日、準決勝は中3日、そして決勝はまたも中2日で迎えなければならない。

 1位で突破する場合に対するアドバンテージは、対戦相手が事前に判明しやすいということぐらいだろう。1位で通過した場合は、各グループ3位のチームのうち、どこが上がってくるかによって対戦相手が変わる。2位で通過した場合は、ベスト16の試合までに分析する時間が稼げる。

 それでも2位抜けすることになると、対戦相手も日程も格段に厳しくなる。戦略も戦術も体力も、最も試される展開になるだろう。そしてそれくらい厳しい中で優勝してこそ、ワールドカップ(W杯)への強化としては一番いい内容になるのではないだろうか。

 決勝トーナメントの対戦相手に、日本の「逆境狙い」を悟られないように、グループリーグではぜひとも弱いふりをしていただきたい。「この日本なら勝てる。今のうちに叩き潰す」と牙を剥かせて、そこを返り討ちにするくらいの戦いだと、大会も大いに盛り上げると思うのである。こんな話を森保監督にすると、すごく怒られてしまいそうだが。

森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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