日本代表、アジア杯の見どころは? 鍵は「死活問題」への対応…強固な基盤のうえに何を上乗せするか興味深い【コラム】
強化の観点ではW杯予選よりアジア杯のほうが重要、ローブロックをいかに攻略するか
元日に行われたタイ代表との試合に5-0と勝利したあと、アジアカップに臨む26人のメンバーが発表された。
カタールでのアジアカップは、およそ1か月間も代表活動を集中して行えるまたとない機会だ。開催中のプレミアリーグからも遠藤航、三笘薫を招集するなど、ベストメンバーを揃えた。試合の重要性から言えばワールドカップ(W杯)予選だが、AFC(アジアサッカー連盟)の出場枠が倍増した予選で日本代表が敗退するとは考えにくく、強化の観点からすれば長期合宿ができるアジアカップのほうが重要とも考えられる。
すでに日本代表としてのプレースタイルは基盤が出来上がっているが、そのうえに何を上乗せしていくのかは興味深い。これまではアジアカップを長期合宿として利用して基盤作りをしてきたものだが、今回はすでにそこは終了しているのだ。
アジアカップは、2004年の中国開催までW杯の中間年に行われていた。しかし、2007年大会からW杯の翌年に開催されるようになった。つまり、アジアカップからW杯本大会まで3年も間隔が空く。そうなると、アジアカップで長期合宿を経験したメンバーもかなり入れ替わってしまいそうだが、日本代表に関してはそれほど大きな変化は見られない。
前回(2019年)の主力メンバーからは大迫勇也、原口元気が22年カタールW杯メンバーから外れ、柴崎岳もメンバーにはいたが出場はしていない。その前の2015年の主力で3年後のロシアW杯メンバーにいなかったのは遠藤保仁と森重真人。いずれも主力の入れ替わりはあったとはいえ、それほど数は多くない。前例を踏まえると、今回のアジアカップに招集された26人の多くは2026年W杯メンバーになりそうである。
ただ一方で、前回アジアカップからW杯の間で台頭した選手として三笘、久保建英、田中碧、守田英正、鎌田大地がいて、いずれも重要なポジションを占めることになった。堂安律、大迫勇也、南野拓実、そして負傷でアジアカップに招集されなかった中島翔哉を含めると、当時の攻撃陣はすっかり入れ替わったことになる。やはり3年間は長く、全体の選手構成に大きな変化はなくても新戦力の台頭でチームが大きく変わることはありうるわけだ。
おそらく今大会の日本代表はターンオーバーで戦うと思う。森保一監督のモットーである「良い守備から良い攻撃」のプレースタイルにおいて、プレー強度の維持は死活問題であり、W杯でも同じメンバーで戦い続けるのは難しいからだ。
一方で、アジアでは相手に引かれる展開が予想され、ローブロック攻略は大会通してのポイントになる。伊東純也、堂安、久保、中村敬斗、負傷から回復すれば三笘もいるサイド攻撃は強力。引いた相手を崩すうえで鍵になるバイタルエリアへの侵入ができる南野、久保などトップ下の活躍も期待される。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。