新星・広島国際学院が感じた“強豪校の圧” 青森山田に7失点完敗も収穫「ちょっとビビった」「何か分かった」【高校選手権】
3回戦で常連校の青森山田に完敗
快進撃を続けてきた広島国際学院が力尽きた。1月2日に第102回全国高校サッカー選手権3回戦で青森山田と対戦し0-7で大敗した。
精度の高いキックを見せていたMF渡邊雄太(3年)は「やる前は勝とうと思っていた」と口にして試合を振り返る。
「前半、0-1で自分たちからしたら良く出来たなと。県大会でもそういう場面からひっくり返してきたんで。やってやろうと思って」と、臨んだ後半、自分たちのプレーは出来始めていたという。
「後半から自分たちのプレーが少しできたんですが」
ところが後半開始からわずか3分後に「一瞬の隙を突かれて追加点を取られて」しまい「取り返してやろうと、点を取られても仕方ないと。1点を取り返すぞと」と、取りに行ったが、逆にやられてしまったと渡邊は肩を落とした。
「で、行ったんですが、結果的に1点も取れず7点。自分たち、こんなものなのかなと、痛感しました」
前半シュートゼロだった広島国際学院は、自分たちの流れが少しずつ出せるようになった後半に2本のシュートを放っている。そのうちの1本を打っていたFW野見明輝(3年)は「あれを決めきれるのが、上の選手だと思うので。そういう人たちが残っていくと思う。そういうところを決めきれるようにならないといけないなと思いました」と話す。状況としては右サイドからの斜めのパスが差し込まれ、ぽっかりと開いたスペースで野見が受けていた。
「ディフェンスも来ていなかったので、トラップを入れてもいいという選択肢はあったんですけど」と話す野見は「トラップしたら、相手が来るだろうなと思って、ダイレクトで蹴って」と自らの判断を振り返った。居ないはずの相手選手の寄せを想定したのは、青森山田という名前が醸し出す圧迫感だったのかもしれない。そんな野見は「前半ちょっとビビっていて。頭では考えないようにしていたんですが、メンタル的にビビっていたのかなというのがあった」と話している。その思いは後半に入るところで修正できていたと振り返るが、日本一の高校との対戦の中で重圧を感じていて不思議ではなかった。
大学でもサッカーを続けるという野見は「やっぱ力で負けたなというのは大きかった。これから筋トレとかにも力を入れて行きたいと思います」と次のステージを見据えていた。
なお、7失点で大敗した広島国際学院は試合後のロッカールームから40分以上出てこなかった。さぞかし中ではしんみりとしたムードになっているのだろうと想像したが、野見は「ずっとみんなで笑って。泣いている人を笑ったりとか、そんな悲しい終わり方は自分たち、多分できない」と苦笑い。
「ロッカーに帰って5分ぐらいは静かだったんですが、この空気、耐えられないな、と。すぐにみんなうるさくなりました」と話していた。ちなみに真っ先にいじられたのはオウンゴールの選手だったという。
明るく大会を去る広島国際学院は、後輩たちにまた来たいと思わせたはず。ちなみに谷﨑元樹監督は「常連校が常連校である理由というのは、何か分かった気がします。また、来たいですね。ここは。やってみたいです、もう1度」と話していた。出場することで見えるものがあるということ。広島の新興勢力はこれからも手強そうだ。
(江藤高志 / Takashi Eto)
江藤高志
えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。