「びっくりですよ」 元日のPK練習が結実…昌平2年生GK、コーチと二人三脚で掴んだ主役の座【高校選手権】

2年生の佐々木智太郎がPK戦で本領発揮【写真:徳原隆元】
2年生の佐々木智太郎がPK戦で本領発揮【写真:徳原隆元】

大津(熊本)をPK戦の末に破りベスト8入り、2年生GK佐々木智太郎が躍動

 浦和駒場スタジアムで1月2日に行われた第102回全国高校サッカー選手権3回戦で、今季のプレミアリーグEASTで7位の昌平(埼玉)が、WEST4位の大津(熊本)をPK戦の末に破り、3大会ぶり3度目のベスト8に駆け上がった。

 2度も先行される苦しい展開だったが、エースFW小田晄平と切り札のMF長璃喜の得点で追い付き、米子北(鳥取)との2回戦に続くPK戦へもつれ込んだ。

 4-3で制した米子北戦は、相手のシュートが右と左のポストに弾かれる幸運もあったが、2年生GK佐々木智太郎が読みを誤ったのは1本だけで、シュートコースにはしっかり反応していた。

 それでも加藤大地GKコーチは納得がいなかった。「あのPK戦にしても悪くはなかったが、もう少しいいタイミングで反応してほしかったんです」と説明。元日から1時間のPK練習をみっちりこなし、大津戦に備えたのだ。

 1年生のGK入江希星がキッカー役を務め、ペナルティーマークから1.5メートルもゴール寄りから打ち込まれるシュートに対し、反応するタイミングを徹底的に身体に染み込ませた。

 加藤コーチは「時間は掛かりましたが、最後はきっちり仕上がったので、PK戦になってもいけると確信していました。智太郎に『明日はヒーローになろう』と言った矢先ですからね、びっくりですよ。インタビューを受ける姿が見られるなんてもう、めちゃくちゃ嬉しいですね」と自分のことのように喜んだ。

 1人目と3人目には逆を突かれて決められ、2人目はシュートコースに反応したものの、あと少しのところで届かなかった。そうして4人目がやって来た。「相手の目と助走をしっかり見て、どっちに蹴るのかすぐに判断しました。完全に(コースを)読み切れた。PK戦は得意なので、自信を持って跳びました」と解説したパンチングは、左に横っ跳びしてセーブしたものだ。防御して起き上がると、喜びを爆発させて派手なガッツポーズを作った。全国高校選手権で昌平のPK戦はこれで4度目だが、全勝記録を更新した。

昌平に進学後は一心不乱に練習に打ち込み、昨年1月からレギュラーの座に

 佐々木は昌平の下部組織である中学生年代の街クラブ、FC LAVIDAの出身。2021年の高円宮杯第33回全日本U-15選手権では2度目の出場で準優勝した。

 しかし、FC LAVIDAでの正GKは同い年の白根翼で、佐々木はこの大会をはじめ3年間控えに甘んじ、公式戦には出場していない。

 そして、昌平に進学後は一心不乱に練習に励み、このチームが立ち上がった昨年1月からレギュラーの座を掴んだ。「中学時代に比べ練習を2倍頑張ったほか、日常生活から変えていくことを心掛けました」と守護神に成長した背景を明かす。

 持ち味はハイボールの処理とコーチングにシュートストップだが、加藤コーチが付け加える。「色々なものを地道に吸収しながら、成長しています。すごく優しい子で、さらに逞しくなってくれたらいいですね」と教え子を評した。

 次は今季のプレミアリーグ・ファイナル王者の青森山田(青森)との決戦だ。3回戦では広島国際学院(広島)から7点を奪って圧勝した。

 プレミアリーグEASTでは1分1敗だが、188センチの大型GKは「僕らは日本一を目指しているので、次も絶対に勝ちたい」と4年前の準々決勝で敗れた先輩の意趣返しに燃えている。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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