「序列が変わったというよりは…」 森保ジャパン、田中落選、佐野選出の狙いを日本代表OBが推察【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】遠藤&守田に近いスタイルの選手として佐野を選出か
森保一監督率いる日本代表は1月1日、今月カタールで開幕するアジアカップに臨むメンバー26人を発表した。常連組では鎌田大地(ラツィオ)、田中碧(デュッセルドルフ)とボランチでプレーができる2人が落選。遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティング)の鉄板コンビ、そして元日のタイ戦にも出場した佐野海舟(鹿島アントラーズ)の3人だけとなった。元日本代表DF栗原勇蔵氏は、佐野がメンバー入りするもボランチの序列自体は変わっていないと見ている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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2024年の初陣となったタイ戦のスタメンには、新戦力のテストも兼ねてA代表デビューとなるDF藤井陽也(名古屋グランパス)、MF奥抜侃志(ニュルンベルク)、初招集のMF伊藤涼太郎(シント=トロイデン)が名を連ねる。前半はタイ相手に最終局面を崩すことができず、スコアレスでハーフタイムを迎えた。
中村はMF堂安律(フライブルク)とともに、後半開始からピッチへ。すると一気に流れは日本へ傾く。後半5分にMF田中碧(デュッセルドルフ)のゴールで先制。さらに同27分、厚みのある攻撃からMF佐野海舟(鹿島アントラーズ)がシュートを放つと、相手GKが弾いたこぼれ球を中村が蹴り込んで追加点を決めた。
その後相手のオウンゴール、MF川村拓夢(サンフレッチェ広島)のA代表初得点、MF南野拓実(ASモナコ)で仕上げて5-0の勝利。後半爆発した日本が大量得点でタイを圧倒した。
その後、日本代表はアジアカップに臨むメンバー26人を発表。タイ戦に招集されたなかでは、常連組の田中が落選、2023年11月の2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選でA代表デビューを飾った佐野がメンバー入りと明暗が分かれる形となった。
4-2-3-1システムにおいては、遠藤と守田がボランチの鉄板コンビなのは間違いない。しかし、決勝まで勝ち上がるとなれば休息させることも必要で、4-1-4-1システムを採用すればボランチはもう1枚必要になる。
日本代表OB栗原氏は、森保監督が佐野を選出した意図に関して「田中よりも佐野のほうがどっちかと言えば遠藤、守田の代わりっぽい感じ。ボール奪取力が高い。田中のほうがゴール前に顔を出すようなタイプ。2列目には攻撃的な選手も多いし、守備的MFはやや手薄なところがあるので、そこを重視して選んだのかなと思います」と推察する。
もっとも、栗原氏は佐野のポテンシャルを評価しつつ、遠藤、守田に続くボランチの3番手以降の序列が変わったわけではないと指摘する。
「佐野はタイ戦を見ていてもいい選手だと思いました。遠藤、守田が絶対的な存在の分、絶対的な選手が抜けた時に、それに近いことができるほうを選んだ気がします。厳密に言うと、序列が変わったというよりバランスも考えての選考だと思います。ただ鎌田も外していて、田中も含めて(攻撃ができる)2人を外すということは、逆に言ったら南野拓実と久保建英をトップ下と考えているのでしょう」
森保監督がアジアカップの期間中、ボランチをどのようにやりくりするのかも注目だ。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。