アジア杯“落選組”に「驚きだ」 日本代表OBが「最も期待していた」選手は?【見解】
【専門家の目|金田喜稔】田中碧、鎌田大地、古橋亨梧らが落選「天秤にかけられた」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング17位)は、1月1日に国立競技場で史上初の元日開催となる国際親善試合でタイ代表(同113位)に5-0で勝利後、アジアカップメンバー26人を発表した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は“落選組”について言及し、「驚きだ」「最も期待していた」と持論を展開している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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アジアカップのグループDに入った日本は1月14日にベトナムとの初戦に臨み、イラク、インドネシアと対戦。2011年以来3大会ぶり5度目の優勝を目指して戦う。
タイ戦後、アジアカップに向けたメンバー26人が発表され、常連組ではMF鎌田大地(ラツィオ)やMF田中碧(デュッセルドルフ)が選外となった。また、12月30日のレンジャーズ戦で強烈ミドルシュートを叩き込んだFW古橋亨梧(セルティック)も落選となり、SNS上では反響が広がっていた。
金田氏は「田中の落選は驚きだ。コンディションやパフォーマンス的にはアジアカップのメンバーに入ってもいい水準にはあると思う。ポジションや組み合わせ、タイプなど総合的に判断し、最終的に佐野海舟(鹿島アントラーズ)への評価が上回ったのだろう」と語る。
一方、鎌田については「所属クラブで熾烈なポジション争いを繰り広げている真っ最中で、コンディションがまだ上がり切っていない印象は受ける。久保建英(レアル・ソシエダ)や堂安律(フライブルク)、南野拓実(ASモナコ)らが安定したパフォーマンスを見せており、そこで違いが生まれたのかもしれない」と分析した。
攻撃陣の選考は「上田綺世(フェイエノールト)、浅野拓磨(ボーフム)、前田大然(セルティック)ら常連組は順当に選ばれた」と指摘。そのうえで「おそらく当落選上だった細谷真大(柏レイソル)と古橋亨梧が天秤にかけられた。古橋は先日スーパーミドルを決めて調子は決して悪くないはずだが、細谷への期待が上回った形なのだろう」と続けた。
ポテンシャル十分の伊藤涼太郎も落選「まだ足りないものがあるということ」
金田氏が「個人的に最も期待していた」と名前を挙げたのは、25歳MF伊藤涼太郎(シント=トロイデン)だった。
「タイ戦の前半は、ドリブルで相手をかわしてシュートにつなげるシーンもあったし、彼にボールが入ると何か起きる気配があった。伊藤にボールが入ると、周りも連動して動き出していたが、それは伊藤がきっちりボールをコントロールして、多彩なボールを出せる技術があるのが分かっているからこそで、信頼の証とも言える。ただ、前半はあと少しのところで呼吸が合わず、結果的にゴールは生まれなかった。代表歴の浅い選手も先発していただけに難しい前半だったのは確か。だが代表で生き残るためには、もっとインパクトを残さないと難しいという印象は受けた」
伊藤はアジアカップのメンバーから落選したものの、金田氏は「森保監督やスタッフ陣が、伊藤のポテンシャルが高いと見ているのは間違いない」と断言。「ただ、今回アジアカップメンバーから落選したのは、まだ足りないものがあるということ。個人的にはアジアカップを通じて成長し、活躍する姿を見たかったので残念な思いはある。本人は当然悔しいだろうが、今回の落選をバネにして、さらなる高みを目指してほしい。プレーを見ていると楽しいし、今後の巻き返しを期待したい」とエールを送っていた。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。