引退のアンリに送られた、あるオランダ人からの想いの詰まったメッセージ

 

アンリとファン・ペルシーが歩んできた道

 

 アンリとファン・ペルシー。この2人は非常に近しい道を歩んできた。ポジションをウィングからセンターフォワードにコンバートしたことで、その才能を開花させ、世界に旋風を巻き起こした。同じ名将のもと、同じクラブで。

 それだけに、先輩FWティエリ・アンリの引退を、最も神妙な面持ちで見届けたのは、おそらくFWロビン・ファン・ペルシーだろう。オランダ代表のエースにとって男は、自身のフットボール人生に大きな架け橋を掛けてくれた、唯一無二の存在だったはずだからだ。

 アンリは1999年にアーセナルへの移籍。それまでウィングでスピードを活かしたプレーを武器としていたが、ガナーズ入団と同時にアーセン・ベンゲル監督からセンターフォワードでのプレーを言い渡される。初年度こそ適応に苦しんだ時期があったものの、2年目からはセンターフォワードとして圧倒的な存在感を放つようになった。

 3年目には得点王に輝き、アーセナルを優勝へと導いた。合計4度のゴールデンブーツを受賞したアンリは、2007年に誰もが認める「レジェンド」として、ファンの喝采を浴びながらアーセナルを去った。

 一方、ファン・ペルシーは04年にガナーズに加入。当初ウィングで重宝されていたオランダ代表FWだが、エースの座についていたFWエマニュエル・アデバヨールの移籍により、ベンゲル監督から本格的にセンターフォワードへのコンバートを告げられる。そこから圧巻の得点力で世界を驚かせ、11-12シーズンには得点王に輝いた。

 その翌年にファン・ペルシーはマンUへと移籍したわけだが、アンリと異なる点があるとするならば、移籍にファンが反発し、「裏切り者」と非難され、本拠地エミレーツでそのユニフォームが燃やされる事態にまで発展したことだろう。

 それでもファン・ペルシーにとってアンリが特別な存在であることに変わりはない。12年に1か月半限定でアンリがガナーズに復帰した際、アンリのチップのかかった巧みなループパスからファン・ペルシーがダイレクトボレーでゴールに叩き込んだシーンがある。その際、当時のエースは、伝説のエースとの共演に心を躍らせていた。

 そのアンリの引退。ユニフォームを脱いだフランス人は、ツイッターで「フットボールが与えてくれたすべてのものに、ありがとう」と全世界にメッセージを発信した。そして、そのメッセージに返信をしてきた一人の男がいた。その男は、どうやらアンリの大ファンであるらしい。

「あなたと共にプレーできたことこそが、僕の誇りだった」

 それはロビン・ファン・ペルシーという、大スター・アンリを誰よりも愛する青年からのメッセージだった。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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