18年ぶり2度目の出場で初ゴール 柳ヶ浦が選手権の歴史に刻んだ“デザインプレー”「選手の判断」【高校選手権】
柳ヶ浦としての選手権初ゴールをDF中川がゲット
18年ぶり2度目の出場の柳ヶ浦(大分)が新しい歴史を作った。
12月29日に行われた第102回全国高校サッカー選手権1回戦、帝京大可児(岐阜)戦でのこと。前半27分のコーナーキック(CK)の場面で中川喜之輔がゴール。これが柳ヶ浦にとって選手権初ゴールとなった。
チームの歴史に残るのではないかとの質問に対し「自分ではあんま実感ないんですけど」と話す中川は「むちゃくちゃ嬉しかったし、このまま試合が終わればいいなって思ったんですが」と口にしつつ「お父さんとかお母さんに、自分のサッカーしてる姿が好きと言われてここに送り出されたので。そこで入れられたのは良かったんですけど、やっぱり勝利を届けられなかったっていうのは残念でした」と、1-2で逆転負けの結果に表情を曇らせた。
中川は「自分は、点決めるみたいな輝く選手じゃないし、チームが点を取れればそれでいいんで」と口にするような謙虚な選手だが、有門寿監督は「得点した中川なんかも日頃から本当に一生懸命やる選手なので、そういう選手のところにボールがしっかり転がってくれたのかなというふうには思いますね」と中川のゴールに目を細めていた。有門監督にしてみれば決めるべき選手が決めたとの思いがあったようだ。
なおこの得点はCKでのデザインプレーで生まれている。有門監督はこのCKについて「いくつか、コーナーはデザインしたものを持っていて。そこに関しては基本的に選手の判断に任せているんですけども、こぼれ球というか、弾いた後のところの準備もやっていたことがそこは出たのかなというふうに思いますね」と振り返る。
中川は、ピッチ上での選択について「キーパー(竹内耕平)のキャッチングが、真上が上手ってことで、キーパーを自由にさせないように前と後ろでブロックして、ファーとニアにヘディングの強い選手を置いて」とその意図を説明しつつ「自分は、点決めるみたいな輝く選手じゃないし、チームが点を取れればそれでいいんで。キーパーを自由にさせずに、外園(優心)とかハセル(八尋馳)にヘディングさせるっていうのがあったんですけど、自分のところにボールが転がってきたので。あまり力まず打てました」と述べている。
そして「やっぱりここまでは自分1人の力では絶対に来れなかった」と話し始めた中川は「県決勝の時に自分がボールを取られて失点してしまって。そこで本当にゴール取られた時はもう終わったと感じてたんですが、その後仲間が点決めて勝つことができたんで」と選手権に連れてきてくれたチームメイトに感謝していた。
なお、試合後のロッカールームでの後輩とのやり取りを質問すると、少し目を潤ませつつ2年生の外園優心について言及。
「ずっとセンターバックでやってきた外園には、ずっと仲良くしたり、助けられたり、ぶつかり合ったこともあったんで。そこに関しては思いを伝えられたかなと思います」
そう話した中川は後輩たちに「来年また戻ってきてほしいです」とエールを送っていた。
江藤高志
えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。