「ドフリーを3本も外した」 米子北、期待のエースFWに指揮官が述べた思い…得点量産へ【高校選手権】
FW愛須は2ゴールをマーク
第102回全国高校サッカー選手権第2日は12月29日、首都圏8会場で1回戦の残り15試合が行われ、14年連続19度目出場の米子北(鳥取)は初出場の山形明正(山形)に4-0で快勝し、12月31日の2回戦で昌平(埼玉)と顔を合わせる。
今季5年ぶりのプレミアリーグWESTに復帰した米子北は、前半に11本、後半も12本のシュートを放って山形明正を攻め立てた。
立ち上がりから森田尚人、愛須隆聖(ともに3年)の2トップに長いボールを入れて相手の守備ラインを混乱させ、タイミング良くプッシュアップして敵陣に大勢が進出。序盤から主導権を握った。
前半14分、4-4-2の左MF城田利恩(3年)が守備ラインの背後に絶品のパスを供給。これをGKが処理ミスし、愛須が拾って無人のゴールを流し込んで先制した。同18分には愛須の縦パスを受けた主将のボランチ上原颯太(3年)が、右足で蹴り込んでリードを広げた。
対する山形明正は、トップ下のMF佐々木貴彬(1年)が3本のシュートを放って応戦したが得点できず、前半を0-2で折り返した。
後半に入っても米子北がボールを握り、外から鋭いアタックを仕掛けて主導権を渡さない。同9分、城田の蹴った右コーナーキックをセンターバック(CB)藤原壮志朗(3年)がヘディングシュートを叩き込み、決定的な3点目を挙げた。同23分にも上原の最終パスから愛須が決めて突き放した。
就任8年目の米子北・中村真吾監督は、「目の前の試合に集中し、いい準備ができていました」と快勝は今大会に向けて周到な練習をしてきた成果だと胸を張った。
指揮官は先制点について「グラウンドがスリッピーだと話していたので、事故を起こしたくなかったが(うちは相手のミスを)しっかり狙って取れました」と振り返る。
2得点の愛須は1人で8本ものシュートを記録。ただ指揮官は「元々いいキックを持っている選手だが、今日はドフリーを3本も外した。ここぞの場面でしっかり決められる選手になってほしい」と期待する。
県予選は準決勝の米子松蔭戦でハットトリックを完成させたが、得点はこの1試合に終わった。しかし全国大会では1試合で既に2得点。愛須は「1点目はキーパーが前に出てきていたので冷静に決められた。2点目は1つ前に外していたから、気持ちで振り抜きました」と話すと、「あれだけ打って2点しか決められなかったので、しっかり修正して2回戦ではもっと決めたい」と言葉をつないだ。
山形明正は後半に4本のシュートを放ったもののゴールは遠く、山形県勢として17年ぶりの初戦突破はならなかった。
米子北の次戦は東西プレミアリーグ同士の決戦となった。中村監督は「昌平は日本で一番高いレベルにある素晴らしいチーム。うちは不器用なのでやるべきことをしっかりやるだけ」と述べ、謙虚な言葉の中にも闘争心をたぎらせた。
河野 正
1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。