「生ぬるい」と叱責された磐田内定の東福岡エース イニエスタを見据える10番藤川が抱く葛藤とは

「ピッチではイニエスタでありたい」

 藤川が口にした「自分の考え」、それはピッチでも表現されていた。象徴的だったのが3得点目の場面だ。相手DFと2対1の数的有利な場面でボールを受けた藤川は、卓越したスルーパスをFW佐藤凌我に供給し、相手GKとの1対1の場面を作り出した。結果、GKが佐藤を倒しPK判定。これを冷静に決め、3-0とした。

 この場面について「あそこは自分で切れ込んで仕掛けたい場面だったけど、より確実な選択をした。それがあのシーンではパスだったということ」と振り返った。2年生まではどんな局面でもがむしゃらに仕掛けていた藤川は、3年生になって「ああいうパスが出せたということは、ボールをもらう前に周りが見えているという証拠」と、目に見える変化が生まれていた。それは、最上学年で選手権の舞台に立つ藤川なりの”責任感”でもあった。

 藤川は「もちろん、自分でも決めたいですよ」と前置きした上で、自身の目指すプレーヤー像を口にした。

「海外の試合を研究して、こういう場面ではこういうアングルが空くんだなというのをイメージしている。自分はイニエスタが好きなので、よくプレーを見て勉強している。バルサにおけるイニエスタのような仕事もピッチで体現していきたい」

 エースとして求められる得点への姿勢、自身が目指すチームのためのプレー。藤川の表情には、その狭間で揺れ動く心の葛藤が垣間見えた。しかし、そのジレンマは、誰もが体感できるものではない。プロのクラブに認められる才能を持つ藤川だからこそ、だ。そして、その壁を乗り越えた先に、Jリーグの舞台での輝かしい未来が待ち受けているはずだ。

【了】

城福達也●文 text by Tatsuya Jofuku

 

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