なぜ敗戦も泣き崩れず? 早稲田実が試合後に示した“品格”「結果以上に大事」【高校選手権】
開幕戦で早稲田実は広島国際学院に0-2で敗戦
第102回全国高校サッカー選手権は12月28日、国立競技場で早稲田実(東京B)と広島国際学院(広島)の開幕戦を行い、初出場の早稲田実は、同じく初出場の広島国際学院に0-2で敗れ、大会をあとにした。
開幕戦で最も印象的だった場面は、試合終了直後にあった。決着を告げるホイッスルが鳴り響いた際、歓喜に湧く勝者、ピッチに泣き崩れる敗者といった構図は、例年の大会でも象徴的なシーンの1つだが、この日敗れた早稲田実の光景は、これまであまり馴染みのない選手たちの姿だった。
早稲田実は開始早々の前半1分、FW久米遥太が力強いドリブルでペナルティーエリア内まで持ち運んで左足を振り抜くも、ボールはゴール右へ。同3分には、再び久米がGKと1対1のビッグチャンスを迎えるが、シュートは相手GKの好セーブに阻まれた。
その後、前半27分にスローインの流れから先制点を献上すると、後半12分にはロングスローから追加点を許し、0-2で敗戦。東京大会では全試合を無失点で勝ち上がってきた早稲田実だったが、全国大会の洗礼を受ける形となった。
試合終了後、筆者はすぐに取材に備え荷物を片付けて記者席から離れようとしていた際、早稲田実の選手たちの様子を見て、足を止めた。そこには、敗戦直後に誰一人としてうなだれることなく、即座に列に並び、丁寧に握手を交わし、迅速に各方面へ挨拶に回り、深々と頭を下げる姿があった。
囲み取材では、2つの決定機を外した久米自身に向けた質問としては酷と思いつつ、なぜ早稲田実の選手たちは敗戦したにもかかわらず、それを感じさせないような立ち振る舞いができたのかを尋ねると、久米は凛とした表情で答えた。
「試合が終わっても、まだ早実サッカー部として多くの方々に見られている立場。そこでだらしない姿を見せてはいけないということは、試合の結果以上に大事であると認識している」
エースで3年生の久米にとって、序盤のチャンスを物にしていたら……という思いや悔しさがないはずがない。しかし、それでも自分たちを応援してくれた人たちへの感謝や挨拶、サッカー部として示すべき佇まいが何よりも重要であるという、早稲田実の品格そのものを映し出していた。
(城福達也 / Tatsuya Jofuku)