開幕25戦負けなし首位のレバークーゼン、強さの秘訣は「前輪駆動型」 シャビ・アロンソ監督が定着させた洗練スタイル【コラム】
リーグ戦13勝3分無敗で「冬の王者」となったレバークーゼン、悲願の初優勝へ邁進
クリスマス前の第16節を終えたブンデスリーガ、冬の王者となったのはレバークーゼンだ。今季開幕から25試合で負けなし、リーグ戦は13勝3分無敗。バイエルン・ミュンヘンを抑えて首位に立っている。第16節でもボーフムを4-0と一蹴した。
シャビ・アロンソ監督はリバプール、レアル・マドリード、バイエルンなどビッグクラブでMFとして鳴らした名手だが、監督としても名将との評価が高まっている。昨季10月から率いているレバークーゼンは初のトップチームでの指揮だったが、途中就任にもかかわらず立て直して6位、そして今季は今のところ首位。
無駄のないパスワークで前進していくレバークーゼンはパスの受け方や出し方が洗練されていて美しく、いかにもシャビ・アロンソ監督のチームという気がする。どの選手も立ち姿がきれいなのは監督の影響ではないか。
戦術的には前線の3人の距離感が近いのが特徴だ。1トップのビクター・ボニフェイスと2シャドーのヨナス・ホフマン、フロリアン・ビルツの3人が攻守ともに近くでプレーしている。5レーンの中央3レーンを占める3人だが、1人が外へ移動したら3人の距離感をあまり変えずに3人セットで動く。この3人のパスを受ける技術と連係が素晴らしく、まるでミニゲームのようにボールを動かして簡単にシュートへ結び付けてしまう。技術の高い3人が近い距離にいることで連係がスムーズなのだ。
守備でも3人はセット。中央3レーンを3人というのは、前線の守備の圧力としては最も強い。3人の献身的な守備力もあって、レバークーゼンは敵陣で奪ってのショートカウンターを成功させている。また、最初の圧力が強いのでディフェンスラインを高くキープして全体をコンパクトにまとめられている。
3-4-3または3-4-2-1のシステムはJリーグでもよく見られるが、レバークーゼンの場合は前方3人のユニットが攻守に影響を与えている前輪駆動型だ。攻め込まれれば5バックにもなるが、そこまで押し込まれる場面があまりない。
洗練されたパスワークと強度を併せ持つ現代的なプレースタイル。もし、レバークーゼンがブンデスリーガを制すれば悲願の初優勝になる。11シーズンも王者に君臨してきたバイエルンを引きずりおろせば、それもまた快挙だ。
20歳のビルツ、22歳のボニフェイスはビッグクラブが放っておくはずもなく、来季になればレバークーゼンを離れていて不思議ではない。今季は千載一遇のチャンスである。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。