日本代表の実力者5人「当落線上」 闘莉王がポジション争い考察「歴代最高か、黄金の中盤の時と同じぐらい」【独占インタビュー】

闘莉王氏が日本代表の中盤を考察【写真:荒川祐史】
闘莉王氏が日本代表の中盤を考察【写真:荒川祐史】

中盤の絶対的な選手は5人、今の日本代表は「23人に入るだけでも一苦労」

 元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏が約1年ぶりに来日し、「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューに応じた。日本代表の選手層が過去最高レベルで厚くなっていると語る闘将は、欧州の名門でプレーしている選手であっても“当落線上”になる可能性があると指摘した。(取材・文=河合拓/全5回の3回目)

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 今の日本代表は、非常に多くの実力者がいるのでポジション争いが激化しています。2026年北中米ワールドカップ(W杯)2次予選や2024年1月アジアカップのグループステージなどは、正直そこまで日本の力が問われるような機会はないのではないかと思います。それぐらいアジアの中で日本の実力は抜けているように感じます。

 アジアカップに向けて、ヨーロッパで戦っている選手をフル招集できるかどうか不透明です。大陸選手権の招集には拘束力があるものの、そこは海外クラブが温かく送り出してくれるかどうかという問題もあります。どうしてもヨーロッパと日本では、この大会への考え方にギャップ、温度差が出てきてしまいます。

 Jリーグの選手たちもチャンスをもらったりしてアピールしていますが、今の日本代表はベンチに座るのも大変だと思います。それぐらいレベルは高いですし、特に中盤にはめちゃくちゃ良い選手が揃っています。中盤の絶対的な選手というのは、キャプテンのMF遠藤航(リバプール)、MF守田英正(スポルティング)、MF伊東純也(スタッド・ランス)、MF久保建英(レアル・ソシエダ)、MF三笘薫(ブライトン)くらいかなと思います。

 もちろんほかにも実力が揃っていて、MF田中碧(デュッセルドルフ)、MF堂安律(フライブルク)、MF中村敬斗(スタッド・ランス)、MF南野拓実(ASモナコ)、MF鎌田大地(ラツィオ)など能力が高い一流選手ばかりですが、彼らであっても当落線上。調子が少し落ちればメンバー外になるだろうし、実際2023年の試合で外れていた選手もいます。カタールW杯の登録枠は26人でしたが、24年のアジアカップでは登録枠が23人。その23人に入るだけでも一苦労です。

 これだけの選手層というのは歴代最高か、黄金の中盤の時と同じぐらいの凄さ。ヒデさん(中田英寿)、俊さん(中村俊輔)、(小野)伸二さん、イナさん(稲本潤一)たちがいて、さらに小笠原さん(満男)、ヤットさん(遠藤保仁)もいた。この時以来の競争だと思います。

大迫勇也の招集を熱望、上田綺世には「計算された形でのゴール量産を期待したい」

 問題は、これだけ期待されたなかで、そのプレッシャーと戦っていけるか。しっかりと力を出せるかどうかだと思います。今まで最も期待されたのがこの黄金世代の時、2006年のドイツW杯の時だったと思うんです。でも、結果はグループリーグ敗退でした。その経験を日本がどう活かせるか。「負けなければいい」「勝ったらラッキー」という視点ではなく、「絶対に勝たなければいけない」「負けは許されない」ところにアングルを変えないといけません。

 2010年の南アフリカW杯デンマーク戦(3-1)の時も、「引き分けでもいい」「負けなければいい」というのと、「勝たなければいけない」という状況では、やっぱり全然違いました。戦い方も違いますし、相手の構え方も違ってきます。

 今回のW杯2次予選は、今の日本なら勝って当たり前。アジアカップでは優勝あるのみ。準優勝以下なら結果はどれも同じぐらいの心意気で臨んでほしいですし、実際に今の日本にはそれだけの力があると思っています。前回のアジアカップは決勝でカタールに敗れましたが、もう今回は許されません。

 FWでは個人的には、FW大迫勇也(ヴィッセル神戸)を招集してほしいと思っています。今はFW武藤嘉紀(神戸)も面白いですよね。神戸で良い連係を見せていますし、そういう選手を入れるのもいいんじゃないですか? 彼らがアジアカップに招集されるかどうかは注目ポイントですが、これまで招集された選手のなかでは、FW古橋亨梧(セルティック)が最もクオリティーが高いと感じています。

 今はFW上田綺世(フェイエノールト)が一番信頼されているかもしれませんね。とはいえ、点を取った相手がどこかというのも大切です。まだ本当に難しい試合、日本の力が問われるような試合でゴールを取れていません。夏にオランダ1部フェイエノールトが史上最高額で獲得しましたが、まだその金額だけでは計れない面がある。この先の代表戦で、「ボールが来る前から分かっていた」というような計算された形でのゴール量産を期待したいです。要求が高いかもしれませんが、今の日本代表はそれくらい高いレベルにあると思っています。

スムーズな世代交代の要因は? 「僕らが本田、香川の世代につなげ、また次へ」

 2022年のカタールW杯後、DF長友佑都(FC東京)、DF酒井宏樹(浦和レッズ)、DF吉田麻也(LAギャラクシー)の3選手は日本代表に選ばれていません。FWは大迫に代わる選手、彼を超える選手が出てきているとは言い切れない状況ですが、DFは世代交代が着実に進んでいるし、中盤も含めて良いポジション争いが行われていると思います。

 ナラさん(楢崎正剛)、(中澤)佑二さん、俊さん(中村俊輔)、(小野)伸二さんたちがいて、自分たちの世代にいろいろと教えてくれました。それで今度は僕らが、本田(圭佑)の世代、香川(真司)の世代につなげて、香川らの世代からまた次の世代へつなげていった。そうした系譜のなかで、世代交代は今回が一番上手くできているのかなという感じで見ています。

 世代交代が上手くいっている最大の要因は、森保一監督の続投が大きかったと思います。例えば違う外国人監督が来ていたら言葉の壁も当然あったでしょうし、またゼロからのスタートになって、戦術やチーム作りなど新たにいろいろとインプットしなければいけない状況になっていたかもしれません。

 それはそれで選択肢の1つですが、やっぱりチーム作りは少し遅れてしまう。もちろん大前提として、実力のある選手たちが揃っていたことは大きいですが、今回は森保監督が続投したことでスムーズな世代交代ができていると思います。

[プロフィール]
田中マルクス闘莉王(タナカ・マルクス・トゥーリオ)/1981年4月24日、ブラジル・サンパウロ州生まれ。サンフレッチェ広島―水戸ホーリーホック―浦和レッズ―名古屋グランパス―京都サンガF.C.。Jリーグ通算529試合104得点。日本代表通算43試合8得点。浦和と名古屋でチーム初のリーグ優勝に貢献し2006年JリーグMVPを受賞。03年に日本国籍を取得し、04年アテネ五輪に出場。10年南アフリカW杯で日本代表の16強進出に貢献。19年シーズンで現役引退後、解説など精力的に活動し、YouTubeチャンネル「闘莉王TV」も話題を集めている。

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