浦和スコルジャ体制に「もし来季があれば…」 指揮官の知性に見えたクラブ&日本サッカー発展への可能性【現地発】
浦和指揮官をわずか1年で退任、クラブW杯が最後の指揮に
浦和レッズはサウジアラビア開催のFIFAクラブ・ワールドカップ(W杯)で、12月22日の大会最終日に行われた3位決定戦に挑んだ。アフリカ王者アル・アハリ(エジプト)と対戦し2-4で敗戦。マチェイ・スコルジャ監督はわずか1年で退任する。改めて、もう少し日本で指揮する姿を見たい監督だったと感じさせた。
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浦和は15日に大会初戦のクラブ・レオン戦(メキシコ)に1-0で勝利し、19日にマンチェスター・シティ(イングランド)に0-3で敗戦。そして中2日でのアル・アハリ戦を迎えた。その間、レオン戦とシティ戦は全く同じスタメンで、アル・アハリ戦ではMF大久保智明が欠場してDF酒井宏樹がスタメン出場。8日間で3試合を行ったが、ほぼスタメン固定だった。その試合は前半から疲労度が隠せずに2失点。前半終了間際にFWホセ・カンテ、後半の早い時間でDFアレクサンダー・ショルツがPKを決めて追い付いたが、力尽きるかのように2失点を重ねて終えた。
スコルジャ監督は「私自身もたくさんのミスを犯した試合だったと思います。選手の疲労の読みのところでも間違った部分があったと思います」と話した。この試合の前半ですでに疲れ切っていて、サイドチェンジのパスに反応できなくなっているような姿のあったMF安居海渡は指揮官と「本当にやれない状態だったら早く言ってと言われていたんですけど、やりますって伝えたんで。それなりにもっとやれれば良かった」というやり取りがあったと話す。
多くの日本人選手にとって、そこで「無理です」と言うのは難しいだろう。怪我や痛みではなく疲労が理由ならなおさらだ。そのような部分には、良くも悪くも伝統的な社会の慣習も影響するかもしれない。プレーできるかと打診をした時点で、選手の答えは「はい」か「イエス」だろう。ポーランドの文化は分からないが、恐らくスコルジャ監督が判断して違う選手を起用しなければ難しかった。サッカーという競技に関わっているからと言って、人間としての生まれ育ちや、社会からの影響から切り離されることはない。
実現を願ってやまない「長いお別れではないことを願っています」の言葉
退任が決まったあとにスコルジャ監督は「Jリーグのチームや選手たちは、ヨーロッパより細かい指示を求める傾向があります。守備の練習ではあまり違いはありませんが、攻撃の練習では、より細かい指示を求められます。ポーランドリーグとJリーグの最も大きな違いでした。私は攻撃の基本的なルールをチームに与えます。その中で選手たちが創造力を使ってプレーするやり方をしてきました。私の印象ではJリーグのほうがより細かい攻撃の仕方や形を求められます」と話していた。これは良し悪しあるが、パターン化やマニュアル化、答えを知りたがるという部分につながるのかもしれない。
取材をしていても知性的な部分を常に感じさせてくれるスコルジャ監督が3年、あるいは5年と日本で指揮を執っていたら、そうした文化的なものや教育的な背景も理解しながら指揮を執り、よりさまざまなものを浦和や日本サッカーにもたらしてくれたのではないか。日本の暑さも「想像以上のものだった」として、その時期のマネジメントに失敗した部分があると後悔を話したこともある。もし来季があれば、それらの要素を経験として違う手法を取っただろう。
就任1年目だが、前任のリカルド・ロドリゲス監督が残したチームをブラッシュアップしながらAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝を制し、J1最少失点のチームにした。攻撃面では前述のとおりで、「もう少し時間があれば」とも話したし、必ずしも満足のいく戦力補強があったのかは疑わしい。しかしながら、時間が進むにつれて非常にまとまりがあって簡単に崩れないチームになっていった。
最後の試合になったスコルジャ監督は「悲しい形でのお別れになります。でも人生とはこういう残酷な時もあります。来季の浦和の幸運を祈っています」と話した。それでも「今、去りますけど、長いお別れではないことを私は願っています。皆さんに感謝しています。ありがとうございました。お疲れ様でした。また近い将来にお会いできればと思います」と話したその言葉が実現するのを願ってやまない。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)