久保建英、レッド級蛮行に激昂で胸中吐露「イライラした」「がっかり」 1月アジア杯招集へ「残念な気持ちはあるが…」【現地発】
久保にとって思い出深い地での一戦、相手のラフプレーに苦しめられうずくまる場面も
ラ・リーガ第18節カディス戦は2023年を締めくくる最後の一戦であり、その舞台となったアウェーのヌエボ・ミランディージャは久保建英にとって、レアル・ソシエダに加入した昨シーズン、デビュー戦となった開幕戦で決勝点を記録した思い出深い地である。
インテル、ベティスとの公式戦2試合続けてスコアレスドローに終わり、ラ・リーガで6位につけるソシエダは、主力のブライス・メンデスが怪我から復帰し、できる限りのベストメンバーで臨んだ。久保は公式戦4試合連続、ラ・リーガ5試合連続でスタメン入りし、いつもどおり4-3-3の右ウイングで先発出場した。
対するホームのカディスは、今節開始前の時点でリーグ戦13戦勝利なしで16位という厳しい状況が続いていた。そのためソシエダが主導権を握ると思われたが、いざ試合が始まると、年内最後を久々の勝利で終えたいサポーターの熱狂的な声援に後押しされたカディスの激しいプレーに苦しめられ、楽にプレーさせてもらえない展開となった。
久保は時に2人から執拗にマークされ、ボールをあまり受けられない状況が続いたが、前半15分に右サイドを突破してブライス・メンデスのシュートチャンスの起点となる。そして後半14分、右サイドのクロスからチーム最大の決定機を生み出したが、マルティン・スビメンディがインサイドで合わせたシュートは、惜しくもクロスバーを直撃した。
さらに久保はこの日、カディスMFルベン・アルカラスから、普段あまり見られないようなラフプレーを2度受けている。
1度目は前半44分、脇腹を殴られ、あまりの痛みにピッチにうずくまった。2度目は後半40分、自陣でドリブルした際、うしろから腕を掴まれただけでなく、砲丸投げのように360度回されたうえでピッチ上に放り投げられた。この行為に対し、審判の判定はイエローカード。レッドカードでも決しておかしくない蛮行に久保は激昂した。
怒りが収まらない久保が気持ちを吐露「同じサッカー仲間として、ちょっといただけない」
サッカーとは全く次元の違う暴力行為に対して、試合が終了しても久保の怒りは収まらなかった。ミックスゾーンで取材を受けた際、アルカラスに対する気持ちを吐露した。
「久しぶりに少しイライラした。検査はまだしてないけど、ここ(肋骨)にヒビが入っているかも。ああいうプレーは同じサッカーをしている仲間として、ちょっといただけない。明らかにボールに来ていなかったから。ああいう選手なのは知っていたが、あそこまでだとは思ってなかったので、ちょっとがっかりした」
さらにこれが原因で、せっかくのクリスマス休暇が台無しになる可能性を示唆していた。
「もしかしたら検査もしないといけないかもしれないので日本に帰るかどうか分からない。でも2日の試合(アラベス戦)は出るつもりで、しっかり準備はしたい」
ソシエダはボール支配率でカディスを上回ったが、効果的なプレーをあまりできずシュート数で下回った。相手の堅い守りを最後まで破れず、公式戦3試合連続スコアレスドローで終了。勝ち点31の6位という成績で、2023年のラ・リーガ最終戦を終えることになった。
汚いファールを何度も受け、あまり自由にプレーさせてもらえなかったカディス戦での久保に対して、クラブ地元紙の評価はあまり高くなかった。
地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「献身性や姿勢において、これ以上求めることはできない。両サイドで果敢にトライし続けた。彼のベストプレーはスビメンディへのクロスボールだった」と一定の評価を下すも、結果が出なかったことで5点(最高10点)をつけた。
もう1つの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「(アンデル)バレネチェア負傷後、いつもどおりに彼がボールを持った時、相手にとって大きな脅威となった。スビメンディがシュートをクロスバーに当てたプレーでのパスなど、最高のプレーは彼から生まれたが、ファウルの多さと、主審がアルカラスなどのプレーに対して罰を与えなかったことが不利に働いた」と寸評し、3点(最高5点)。一方、全国紙「マルカ」紙、「AS」紙の評価はともに2点(最高3点)と高かった。
スペイン人記者が今季前半戦を称賛「彼はどこに行こうとも戦力を上げることができる」
試合後、スペインのラジオ局「カデナ・コペ」で、スペイン全土を幅広くカバーするフランシスコ・ビニュエラ記者に、この日の久保のパフォーマンスを分析してもらった。
「今日はいつもの久保ではなかった。彼がレアル・ソシエダのプレーにおいて、とても重要な存在だったのは事実であり、これまでの試合で見せていたような優れた動きも見られた。でも今日はカディスがかなり良かったので、いつもに比べると輝きを放てていなかったし、相手のファウル混じりの守備に大いに苦しめられていた」
一方、今シーズンここまでの出来については、非常にポジティブなものと捉えている。
「信じられない! 信じられないほど素晴らしいシーズンを送っているよ! 今さら彼について説明する必要などないが、本当に素晴らしい選手で、チームを背負う存在になっている。自分が望むようなプレーをなんでもできるし、思いどおりにチームを動かしている。勝敗を左右することができる選手だ。私はとても気に入っているよ」
来季の去就については、シーズンの約半分が終わったばかりのため、時期尚早との見解を示していた。
「久保が来季どこでプレーするのか、現時点では全く分からない。特に今日はスーパーリーグの判決が出たこともあり、今後はいろいろな動きがあるかもしれないしね。このまま残留するのか、それともどこかに移籍するのかは分からないが、彼はどこに行こうとも、加入した先でチームの戦力を上げることができる選手だと私は思っている」
アルカラスに受けた怪我の影響で満足いく休みを過ごせるかは分からないが、久保の2023年は上々の出来だったと言えるだろう。カディス戦後、今年1年を次のように締めくくっていた。
「今年は良かったと思う。思っている以上に活躍できたし、年明けから終わりまでだったら結構、点もアシストも絡んでいいシーズンだったかなと思っている。2024年をもっといい年にしたい」
アジアカップの開催スケジュールに疑問「そこは割り切って、選ばれたら頑張りたい」
一方、2024年1月から2月にかけて開催されるアジアカップに関して、スケジュール的に問題があるのではとの疑問を口にしていた。
「チーム(レアル・ソシエダ)が僕を重要視してくれているので、そういった意味でアフリカ選手権もそうだけど、この期間にやるのはちょっとどうなのかなと、僕個人としては本当に思っている。でも言われた以上行くしかないので。呼ばれたら残念な気持ちはあるが、そこは割り切って、選ばれたら頑張りたい」
久保は22日より6日間のクリスマス休暇に入っており、新年最初のアラベス戦に向けた準備を開始するため、28日にチームへ合流する予定になっている。その際、連戦続きの疲れを癒し、肋骨に影響なく元気な姿が見られることを願いたい。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。