10人の正智深谷が残り2分から大逆転! 指揮官の想像を超えた選手の思いとは

「10人でも誰もあきらめていなかった」

 刻一刻と時間は過ぎる。前回大会も1回戦で明徳義塾(高知)に0-1で屈したが、この一戦も前半10分の失点だった。またか……。

 最後の望みとも言えた右CKを後半39分に獲得。小山のキックを遠いポストでDF田村恭志が頭で折り返すと、混戦からDF金子悠野が豪快に蹴り込み土壇場で追いついた。

 1-1からのPK戦をベンチも考えていたそうだが、目安3分のロスタイムが2分あまり経過した時だ。後方からの長いキックをFW梶谷政仁が頭で落とす。このボールを後半24分から出場していたFW上原翔汰がシュート。今度は関東第一のDFがハンドを犯してPKを奪取。主将の小山が右隅に決め、劇的な逆転劇を完結させたのだった。

 1回戦でベンチ入りできなかった悔しさをぶつけた上原が「結果を残すしかないので、やってやろうと思った」と言えば、殊勲の金子は「10人で厳しかったが、誰もあきらめていなかった。むしろ、やってやろうという気持ちの方が強かった」と示し合わせたように、全く同じ表現を使った。

 指揮官は奇跡と評したが、イレブンはそうは思っていなかった。「やってやろう」という不屈の精神力が、幸運と連勝を呼び込み、ハリウッドの著名な脚本家が描くドラマティックな幕切れを演出した。

【了】

河野 正●文 text by Tadashi Kawano

 

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