欧州組はCL/ELで「個」を磨くべし 日本代表、国内組維持でアジアカップに臨むべき理由【コラム】

アジアカップは国内組中心で挑むべき?【写真:徳原隆元】
アジアカップは国内組中心で挑むべき?【写真:徳原隆元】

アジアカップの調整期間は重要

 12月最終週、来年1月1日のタイ戦に向けた日本代表の合宿がスタートする。今回招集されたのはヨーロッパ組15人、Jリーグ組9人。第2次森保ジャパン発足後、最も多い国内組が招集されており、これまで海外組中心だった日本代表の一角に入るべく、タイ戦出場、ならびにアジアカップメンバー入りをかけたアピールが行われるはずだ。

 11月の日本代表戦に招集されていて、今回選ばれていない選手は遠藤航、古橋亨梧、守田英正、川辺駿、鎌田大地、相馬勇紀、三笘薫、前田大然、伊藤敦樹、久保建英。このうち、遠藤、守田、鎌田、相馬、三笘、前田、久保は2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)の出場経験もあり、通常ならば日本代表のメンバーに入ってきてもおかしくないはずだ。

 だが、彼らをアジアカップに呼ぶべきだろうか。むしろ今回のタイ戦でコンディションが上がらなさそうなヨーロッパ組を外し、国内組はこのまま残していいのではないか。

 もちろんアジアカップはチーム作りにとっても大切な大会だ。日本代表が長期で合宿することが可能な機会は、このアジアカップとW杯前の期間ぐらい。そのためチームの完成度を急激に上げることができる。

 また、長期間の合宿で選手同士のコミュニケーションも取りやすいだろう。さらに、長期の大会ということで、スタッフの運用も含めていいシミュレーションにもなるのだ。

 だが、今回のアジアカップで、経験豊かなメンバーを揃えて盤石な態勢で優勝を狙いに行かなくてもいい。理由は3つある。

■1.)現在の日本代表は非常に充実していること。3月はウルグアイ戦に1-1で引き分け、コロンビア戦には1-2で敗れたが、その後は全勝。ヨーロッパ遠征ではドイツもトルコも破っており、W杯アジア2次予選2試合はともに5-0と大差で勝っている。

 しかも、ドイツ戦とトルコ戦では先発10人を入れ替えて結果を出すなど、選手層も厚くなった。現在のところ、このメンバーでアジアカップに向けてはなんら隙がないとも言えるはずだ。

 しかし、これはあくまでアジアカップを考えた場合のこと。W杯の本大会を考えると、現在の層の厚さでもまだ不安は残る。というのも、森保監督が初めて指揮を執った2018年のコスタリカ戦で選んだ23人から、カタールW杯のメンバーに入れたのは8人しかいない。メンバーは65%が入れ代わっている。

 4年間はそれくらい選手が成長して日本代表に入ってくるほどの年月だ。また、2022年のW杯でも多くの怪我人が無理をしてプレーしなければいけない状態になった。となると、今は多くの選手を試しておくべき時期だ。

 すでにW杯予選が始まっているので、大胆な入れ替えができないのだから、このアジアカップを利用して本当に今後代表に入ってこられる選手なのかどうか試しておくのがいいだろう。

欧州組はさらに「個」を磨くべき

■2.)将来的に日本代表が強くなるためには、選手たちがそれぞれ成長することが必要となる。アジアカップよりもレベルが高い大会に出られるチャンスがあるのなら、そちらを優先して「個」を磨いたほうがいいのではないか。

 現在、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)、UEFAヨーロッパリーグ(EL)に臨んでいる日本選手は、鎌田(ラツィオ)、冨安健洋(アーセナル)、久保(レアル・ソシエダ)、遠藤(リバプール)、守田(スポルティング)、三笘(ブライトン)、上田綺世(フェイエノールト)、堂安律(フライブルク)らがいる。

 CLのノックアウトステージが来年2月13日から、ELのノックアウトステージプレーオフが2月15日。また、町田浩樹が所属するサンジロワーズのUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)、ノックアウトステージプレーオフは2月15日。この選手たちを招集して、2月10日の決勝戦まで帯同させた場合、ヨーロッパでの貴重なプレーの機会を奪いかねない。1か月チームを離れていたらポジションを失いかねない競争が行われているからだ。

 となると、ここに名前を挙げた選手たちはアジアカップから外していいのではないか。彼らを欠けばアジアカップでの苦戦は免れないだろうが、将来的にどちらが日本代表を強くするか考えると、今回は多くのヨーロッパ組を選外にしてもいいはずだ。

■3.)アジアカップでは苦しい戦いをしたほうがいいのではないか。カタールW杯アジア最終予選で日本代表はギリギリの戦いを強いられた。コンディションが整わないなかで迎えた初戦のオマーン戦、3戦目のサウジアラビア戦を落としたことで、日本代表はもう負けられないという戦いを続けなければいけなくなった。

 だが、そういう苦しい戦いがあったからこそチームは成長できた。4-2-3-1から起死回生の4-1-4-1に変更して勝利を掴み、試合の勘どころで得点できるようになっていった。

 タイ戦に招集されたメンバーは、まだ日本代表としての経験が少ない。キャップ数が5試合以下という選手が14人含まれる。このコンビネーションすらまだ構築できていない選手たちを厳しい環境でプレーさせ、限界ギリギリの能力を引き出すことで、日本代表の即戦力になるのではないか。そのためにアジアカップを利用するという手はあるだろう。

 以上の3点を考えれば、アジアカップには多くの代表経験が少ないJリーガーを入れたほうが、将来的な強化につながるのではないかと思う。また、近年Jリーガーが代表で初出場したとき、まるでベテランではないかと思うような堂々たるプレーぶりを発揮している。だからこそ多くの選手が日本からヨーロッパに羽ばたけるのだろう。

 その点を考えると、国内組を多く入れてもギャンブルにはならないのではないか。日頃プレーをよく見ることができる選手たちが活躍して堂々と優勝してくれれば、それはまた日本サッカーの活性化にもつながる……とまで考えてしまうのは、取らぬ狸の皮算用なのかもしれないが。

(森雅史 / Masafumi Mori)

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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