闘莉王が選ぶ「“最新”日本代表ベスト11」 将来性評価の選手も指名…「1トップはやっぱり大迫勇也」と力説【独占インタビュー】

約1年ぶりに来日した田中マルクス闘莉王氏【写真:荒川祐史】
約1年ぶりに来日した田中マルクス闘莉王氏【写真:荒川祐史】

鈴木彩艶は「若いですが能力が高い」、激戦のSBは「局面での判断力が極めて重要」

 元日本代表MF中村俊輔氏の引退試合出場などのため約1年ぶりに来日した元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏。「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューに応じ、自身の考える現時点の「“最新”日本代表ベスト11」を選定した。(取材・文=河合拓/全5回の1回目)

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 チームのベースは変わらないと思います。フォーメーションは4-2-3-1システムですが、まずGKを選ぶのが難しいですね。まだこの選手という完全固定の選手はいません。

 現時点では、カタール・ワールドカップ(W杯)のメンバーだったGKシュミット・ダニエルか、GK鈴木彩艶ですね。今、2人はベルギー1部シント=トロイデンでチームメイトですが、試合に起用されているということで彩艶を選びたいと思います。若いですが能力が高くて、将来性も非常に楽しみです。

 最終ラインは右からDF菅原由勢(AZアルクマール)、DF板倉滉(ボルシアMG)、DF冨安健洋(アーセナル)、DF中山雄太(ハダースフィールド)の4人ですね。

 左サイドバック(SB)には、DF伊藤洋輝(シュツットガルト)もいますが、中山はもう少し時間がかかるのかなと思っていたなかで、大きな怪我から復帰して良いプレーを見せています。まだ絶好調時のプレーではありませんが、調子を取り戻しつつあるなと何試合か見て感じました。彼は左サイドハーフとの連係が良くて、オーバーラップをするのか、インナーラップをするのか、それとも少し近くにいてボールを失った直後に取り戻せる位置に行くのか。周囲やチーム状況も考えたサポートの動きがとてもいい。

 サイドはやっぱり、SBとウイングの連係が大事ですから。相手を引っ張ってスペースを作るのか、ボールを受けられるところに行くのか。それとも突破力を生かすために守備のサポートをするのかなど、局面での判断力が極めて重要になります。

 右では菅原がそれを上手くやっています。DF酒井宏樹(浦和レッズ)とDF長友佑都(FC東京)が代表から離れて、「SBはどうなるかな?」と思いましたが、カタールW杯から結構早く世代交代ができた印象です。カタールW杯にはDF山根視来(川崎フロンターレ)が行きましたが、代表はパフォーマンス重視で旬の選手を使わないといけません。またパフォーマンスが良くなってきたら呼べばいいんです。

リバプールで奮闘する遠藤航【写真:ロイター】
リバプールで奮闘する遠藤航【写真:ロイター】

遠藤航の凄さは「認めるべき」 今の久保建英は「鎌田大地よりも計算ができる」

 中盤は、現段階ではMF遠藤航(リバプール)とMF守田英正(スポルティング)のダブルボランチ。遠藤は代表チームのキャプテンですからね。格上のチームと試合をする時、やっぱり遠藤が必要になるのは間違いありません。所属するリバプールでは完全不動のレギュラーというわけではありませんが、あの世界最高峰のリバプールですからね。そこでコンスタントに試合に出場していますし、結果も出しています。その凄さは自分たちが認めるべきものだと思います。

 2列目は、トップ下にMF久保建英(レアル・ソシエダ)、右にMF伊東純也(スタッド・ランス)、左にMF三笘薫(ブライトン)の3人を並べたいですね。この並びは第2次森保ジャパンではやっていない組み合わせですが、久保の今のレベルを見ていると、MF鎌田大地(ラツィオ)よりも計算ができるのかなと感じます。

 日本代表は、やっぱりその時、その時の調子の良さがすべてだと思う。調子が悪ければ、ベンチになる。調子が戻って、比較して上であれば先発に戻る。そのポジション争いがレベルアップにもつながると思うので、今はより調子の良さそうな久保がトップ下に入ったほうがいいと思います。右の伊東、左の三笘は、カタールW杯に出場してから少し波が出てくるかなと思っていたのですが、まったく衰えることも、調子を落とすこともない。この2人が攻撃を引っ張っているという印象です。

 1トップは、やっぱりFW大迫勇也(ヴィッセル神戸)で決まりでしょう。ここは森保(一)監督と俺の考えは、ちょっと違いますね。2023シーズンのJ1リーグで、神戸の初優勝、最優秀選手賞(MVP)、得点王に輝いて個人3冠を達成して注目されていますが、パッと出てきて一瞬だけ輝いているという選手ではありません。2014年、2018年のW杯に出場していて世界大会の経験も豊富で、日本代表の絶対的なエースでした。ちょっとブランクはありましたが、神戸で完全復活しています。ここは大迫でしょう。

 例えばMF南野拓実(ASモナコ)も、同じような状況だったじゃないですか。W杯に出たあとに少し調子を崩して、代表から離れる時期があったけれど、代表に復帰してもう一回チャンスをもらえている。なぜ同じことが大迫に起きないのか。これだけのパフォーマンスを見せて、結果を残しているのだから招集も選択肢だと思います。

今季J1リーグのMVPに輝いた大迫勇也【写真:徳原隆元】
今季J1リーグのMVPに輝いた大迫勇也【写真:徳原隆元】

なぜ大迫勇也を選ぶのか…「すべてが高水準。後輩たちも学ぶべきことが多いはず」

 なぜ自分が大迫を選ぶのか。技術面、戦術面、決定力、すべてに関して今、選ばれているFWと比較してもトップだと思います。

 今の日本代表は前からの守備を求められますが、大迫は守備もやらないわけではないし、むしろめちゃくちゃ上手い。それにセットプレーから点を取れるという引き出しもあります。先日のW杯アジア2次予選の試合でも、日本は多くのセットプレーのチャンスがありましたが、ゴールが決まる気があまりしなかった。そういった場面でもターゲットになれる大迫がいれば、日本の大きな武器になるのではないかなと思います。

 よく言われるのが、年齢のことです。「次のW杯を考えて世代交代している」「現在33歳の大迫は、次のW杯では36歳だから難しい」と言われますが、プレーを見る限り全然問題ないでしょう。2023年のJ1リーグで22得点を挙げていて、日本人2位とは8得点も違うわけですから。怪我をするかどうかは、みんな同じだと思いますよ。

 FW古橋亨梧(セルティック)は別として、ほかのFW陣は今シーズン何点取っているのか。やっぱり差がありますよね。単に点を取ればいいというわけではないですが、ゴールを取れて、ポストプレーも上手くて、大迫はすべてのプレーが高水準です。代表に入れば周囲への刺激に間違いなくなるし、後輩たちも学ぶべきことが多いはず。だから、個人的には次のアジアカップ本大会のメンバー発表で呼ばれるか、ちょっと楽しみなところです。

[プロフィール]
田中マルクス闘莉王(タナカ・マルクス・トゥーリオ)/1981年4月24日、ブラジル・サンパウロ州生まれ。サンフレッチェ広島―水戸ホーリーホック―浦和レッズ―名古屋グランパス―京都サンガF.C.。Jリーグ通算529試合104得点。日本代表通算43試合8得点。浦和と名古屋でチーム初のリーグ優勝に貢献し2006年JリーグMVPを受賞。03年に日本国籍を取得し、04年アテネ五輪に出場。10年南アフリカW杯で日本代表の16強進出に貢献。19年シーズンで現役引退後、解説など精力的に活動し、YouTubeチャンネル「闘莉王TV」も話題を集めている。

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