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「ファンがいなければJリーグと呼べない」 シーズン移行&エンブレム変更…海外出身者はどう見た?【インタビュー】
「現行のシーズン制度はいいと思っているし、個人的には反対」
今シーズンも、Jリーグでは数々の名勝負や名シーンが生まれファンを楽しませた。「FOOTBALL ZONE」では「Jリーグ通信簿」の特集を展開し、2023年を振り返る。そこで、「J.League Journeys」として日本サッカー界の魅力をSNSで発信し続ける英国人ファンのクリスさんを取材。“ピッチ外”での注目事象について考えを訊いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・山内亮治)
◇ ◇ ◇
ヴィッセル神戸がJ1初優勝を成し遂げ、ヴァンフォーレ甲府がAFCアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で躍進するなど、今季のJリーグは新時代の到来を予感させただろう。一方で、それはピッチ内だけに収まるものではない。
その1つが、2026-27シーズンからの実施が正式承認されたシーズン移行だ。現行制度が2月上旬にスタートし12月上旬に終わるのに対し、「秋春制」では8月1週頃に開幕し冬季中断を経て5月最終週頃に閉幕。Jリーグは12月19日に実施した第12回理事会で、「秋春制」への移行を正式承認したと発表した。
降雪地域を本拠地にするクラブの間では不安や反対が根強かったこの新制度、クリスさんは「最終的な判断は2、3シーズン様子を見てから下すべき」としたうえである程度の理解を示す。夏の暑さへの考慮だけでなく、シーズン移行のメリットをこう考える。
「日本人選手にとっては、W杯などの国際大会に向けて正しい循環に入れる可能性がある。欧州主要リーグにいる選手たちと同じ強度やメンタリティーで大会に臨めるといった具合にね」
とはいえ、「現行のシーズン制度はいいと思っているし、個人的には反対」と語るなど、立場は明確。その背景にはファンならではの切実な考えがある。
「母国イングランドのサッカーもフォローしているし、夏にJリーグがなくなると観るものがないんだ。日本と欧州、それぞれのリーグが違うタイミングでスタートすると1年中サッカーを楽しめるよね」
もちろん、反対の理由はファン心理だけにあらず。「北にあるチームほど冬季の試合開催は難しく、どうやって実現させるのかと思ってしまうよ」と降雪による影響を懸念しつつ、シーズン移行で生じ得る弊害を次のように指摘した。
「雪の問題に関して、クラブはスタジアムにアンダーヒーティング(床暖房)を設置することでピッチ上の問題を解決できると思う。それでも、ファンにとって話は別。道路上に大雪が積もっていればそこに辿り着くまでが大変なんだし、ファンは苦労するだろうね。シーズン移行でJリーグ全体がより多くの利益をあげられたとしても、ファンがいなければそれはJリーグと呼べない」
エンブレム変更の意思決定にファンは関与できたか?
またシーズン移行と並んで、Jリーグ複数クラブによるエンブレム変更も大きな注目を集めたトピックと言えるだろう。この流れで特筆すべきは、ファッションやデジタルマーケティングなどに対応すべく“シンプル化”が進んだこと。モダンなデザインを肯定的に受け止める声がある一方で、戸惑いや疑問は国内外で多い。
クリスさんは現在までに発表された新エンブレムを「どれもつまらない」とバッサリ。「『高校生のデザイン?』とさえ感じてしまう」とその見方は厳しい。なかでも、FC琉球のエンブレムに関しては「複雑なデザインで細部にまでこだわりが詰まった印象だったから、ファンタスティックだと思っていた」と変更への複雑な胸中を吐露する。
ただ、クリスさんがエンブレム変更を肯定的に受け止められていないのにはほかにも理由がある。そのキーワードは“歴史”と“ファン”だ。
「Jリーグは今年30周年を迎えたばかりで、歴史はまだ浅いよね。それでもファンはクラブの伝統を理解していて、さらなる歴史を築いていきたいと思っている。それは世界中で同じさ。だから、そんななかでファンが支持しているエンブレムが新たなものに変更されたことは非常に珍しいと思っている。サッカーの世界はファンをベースに成り立つわけであって、歴史もそのための重要な構成要素の1つなんだ」
さらに、エンブレム変更とファンの関係においては大きな懸念を抱いているという。
「エンブレム変更の意思決定に、ファンが関われなかったのではないかと感じている。究極的なことを言えば、すべてのサッカークラブはファンとともにある存在。スポンサーがどこであれ、最終的に必要なのはファンだよね。ファンが腹を立てれば、影響はクラブに及ぶ。それは良くないことだ」
今後も動向が注目されるシーズン移行とエンブレム変更の動き。時代やニーズに合わせた変化を理解しつつも、ファンへの配慮が十分になされているかは注視される必要がありそうだ。