高校ユース年代で渦巻くロングスロー禁止論、元日本代表はどう見た? 「ナンセンス」「個性がなくなる」【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】青森山田の選手がGKの動きを妨害しているようにも見えるが…
高円宮杯U-18プレミアリーグの決勝で青森山田高校(青森)がロングスローから得点した場面を巡り物議を醸すなか、元日本代表DF栗原勇蔵氏は判定に関しては「ファウルのように見える」と言及。そのうえで、ロングスロー戦法への否定的な意見に関しては「ナンセンス」と見解を述べている。
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高校ユース年代の日本一を懸けて12月10日に行われた高円宮杯U-18プレミアリーグの決勝。EAST王者の青森山田とWEST王者のサンフレッチェ広島F.Cユースが対戦し、2-1で前者に軍配が挙がったこの試合では後半終了間際に生まれた得点シーンを巡って議論が巻き起こった。
広島ユースが1-0とリードして迎えたところで、青森山田は相手陣内の左サイドからゴール前へロングスローを放り込む。ペナルティーエリア内へ勢い良く飛ばすと、ボールはゴールイン。レフェリーはこれを得点と認めると、その直後にも青森山田が加点し、劇的な幕切れでの決着となった。
ロングスローからそのまま得点となれば競技規則上、ノーゴールとなるが、広島ユースのGKがわずかにボールに触れたと判断され得点に。さらに、GKを妨害するようなプレーも見られながらもノーファウルだったことから同点ゴールの判定に対する異論の声がSNS上で噴出した。
日本代表OBの栗原氏は、「正直、100%ファウルかどうかは言い切れないですけど、映像だけ見るとファウルのように見える」と見解を述べる。
「(青森山田の選手が)ボールに向かって触ろうと思っているというよりも、(広島ユースの)GKがボールに触りに行っているところを妨害しているようには見える。GKは味方の選手とも最初に少しかぶっているので、審判もそこを見ていて(笛を)吹けなかったのかもしれない。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)もなくて、現場で1回しか見れないとこういうことは多々ある。注目されていたカード、大事な局面でのプレーだったからこその反響。『あの時誤審で……』と言っていても始まらないし、やっていけない。切り替えるしかない」
青森山田のロングスロー戦法に対してはさまざまな議論が巻き起こるなかで、栗原氏は「ロングスロー禁止の主張はナンセンス。テクニック、戦術の1つだし、ロングスローがあるからこそ高さのある選手を使うことにもなる。サッカーはいろんな戦い方があるから面白い。今はつなぐサッカーのほうが主流で、そちらのほうが人気があるかもしれないけど、どこまでがロングスローなのかともなる。ヘディングの重要性もなくなるし、テクニック重視になって、選手の個性がなくなっていく懸念もあります」と、指摘していた。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。