西川潤が「僕は天才じゃない」と語る訳 「普通は出てこない発想」の持ち主に挙げた“真の天才”は?【インタビュー】
C大阪で共闘した柿谷は綺麗なボールタッチや想像を超える発想が「天才」
サガン鳥栖のMF西川潤は、ユース年代で「天才」と呼ばれ、スペイン1部FCバルセロナからの関心も噂された逸材だ。卓越したテクニックとサッカーセンスを備えた21歳のレフティーが、「天才」だと感じる選手は誰なのか。そして、左利きへの“こだわり”とは――。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)
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西川は桐光学園高時代から“超高校級”と評価され、2019年5~6月には飛び級でU-20ワールドカップ(W杯)に出場し、さらに同10~11月に開催されたU-17W杯ではエースとして日本を牽引。世代ナンバーワンとの呼び声も高かった。ドイツの移籍専門サイト「transfermarkt」では「2002年以降に生まれた優れた才能の24人」に選出され、世界的ビッグクラブのバルセロナから報じられたほどだ。
しかし、西川本人は「まず、僕は天才じゃないという前置きをさせてください」と苦笑いする。
「言われてきたのは事実ですけど、僕は全然天才じゃないし、言われていたイメージが残っているだけだと思います。『なんか言っているなぁ』『自分は違うのになぁ』という感じです(笑)」
西川が考える天才の定義は、技術などテクニカル面はもちろん、「何も考えずにできてしまう」「求められている以上のことを平気でしてしまう」こと。それに該当する選手が、セレッソ大阪時代に共闘経験もある元日本代表FW柿谷曜一朗(徳島ヴォルティス)だという。
「曜一朗くんはまさに天才だと思います。一緒にプレーしてみて、感じることも全然違いました。一緒に練習したり、試合に出て、綺麗なボールタッチだったり、あんな体勢でシュートを打てるんだとか、肌で感じました。何も考えずにできてしまうと言ったら曜一朗くんに申し訳ないですけど(笑)、オーバーヘッドとか普通は出てこないような発想。ゴール前で違いを出せる凄い選手です」
今季限りで現役を引退した元日本代表MF小野伸二(北海道コンサドーレ札幌)も、いわゆる「天才」の象徴的な存在。同じ選手から見ても、そのボール扱いは「質が別次元」だと西川は話す。
「公式戦での対戦経験はないですけど、映像で見て、『うわー、凄いな』と(笑)。それこそトラップ1つ取ってもボールタッチが滑らかだし、プレーがとても“綺麗”です。質が自分とは別次元。積み上げてきたものや感性・感覚が違うんだと思います。ゴール前のクリエイティブさも素晴らしいですよね」
レフティーならではの感覚を自負「左利きだからこそできるプレーがある」
3歳からサッカーを始めた西川は、「両親が言うにはボールを触り始めた時から左足で触っていた」生粋のレフティー。必然と左利きの選手のプレーに目が行くという。
「感覚的に左利きと右利きで全然違います。右利きの選手を見ても『このプレーはできないだろうな』と感じますし、逆に左利きだからこそできるプレーはあって、右利きの選手が多いなかでキープすると取りにくかったり、左利きで良かったなと思います。左利きの選手を見ていると、自分の感覚と合う時があるので、左利きの選手を見ることが多いですね。(元日本代表MF中村)俊輔さんが憧れなのは、同じレフティーで高校も一緒というのが大きいです。『レフティー』という響きもなんかいいですよね(笑)」
レフティーと言えば、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(インテル・マイアミ)を参考にする選手が多いなか、同じ左利きでも西川は「少し自分とはタイプが違う気がしてあまり見ない」と明かす。
「メッシは小柄でレフティーでドリブラー。参考にすることはたくさんありますけど、ピッチで自分がそのプレーを選択するかなと思うと、おそらく違うなと。海外の選手だと、(アーセナルのノルウェー代表MFマルティン・)ウーデゴール、(ドイツ代表FWカイ・)ハフェルツ、(イングランド代表FWブカヨ・)サカのプレーは見ます。サカは同世代でアーセナルの主力を務めて、あれだけのスピードと両足で蹴れるので、本当に凄いし天才だと思います。あと、久保建英選手も同世代であれだけ海外で活躍しているのは本当に凄いこと。レフティーで、トップ下や右サイドとプレーするポジションが似ていて、攻守において常に関わるというところですごく勉強になります」
西川もボールコントロールには定評があり、「逆を突くパスには自信がある」と語るが、「それを発揮する前の部分を磨いていきたい。ボールを受けたあとの質も、クロスの出し方や精度、相手との駆け引きをもっと上げていきたい」と、さらなる成長に意欲を覗かせていた。
[プロフィール]
西川潤(にしかわ・じゅん)/2002年2月21日生まれ、神奈川県出身。桐光学園高―C大阪―鳥栖。J1通算66試合・2得点、J3通算1試合・0得点。かつてスペイン1部の名門FCバルセロナからの興味が伝えられたほどの卓越したテクニックとサッカーセンスは一級品。左足でのチャンスメイクには自信を持つが、鳥栖でハードワークや守備のメンタリティーも磨かれている。