「本当に寂しい」 “調子乗り世代”の引退に思うコト…森脇良太が語る同世代の素顔【インタビュー】

愛媛でプレーする元日本代表の森脇良太【写真:(C) EHIMEFC】
愛媛でプレーする元日本代表の森脇良太【写真:(C) EHIMEFC】

今季限りで引退となった柏木の決断はメディアの報道で知る

 2023年のJリーグは全日程を終え、今シーズン限りでの現役引退を発表する選手も出てきた。来シーズンのJ2昇格を決めた愛媛FCでプレーする元日本代表DF森脇良太は、今季限りでの引退を決めた元日本代表MF柏木陽介や昨季限りで引退した元日本代表DF槙野智章氏ら、これまで一緒にプレーしてきた選手たちの引退を見送ってきた。

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 槙野氏や元日本代表DF内田篤人氏、元日本代表MF香川真司(セレッソ大阪)、元日本代表DF安田理大氏、FW森島康仁氏ら、森脇の1つ下の年齢となる2007年にカナダで開催されたU-20ワールドカップ(W杯)に出場した1987年、1988年生まれの選手たちは、「調子乗り世代」と呼ばれていた。年齢が近く、彼らとの交流もあった森脇は、「調子乗り世代と言われていますが、実は真面目な選手が結構多いんです。僕もそう見えないかもしれませんが、実はめちゃくちゃ真面目なんですよ(笑)。僕の世代も、彼らの世代も、ワイワイ楽しく過ごす部分は出すんですけど、ピッチに入ったら本当にしのぎを削るんです。みんなが成長をするために、バトルを繰り広げる。柏木陽介と槙野智章とかは、ユースから一緒でものすごく仲はいいんですが、ピッチに入った時は練習から激しくバトルを繰り広げました。そういう関係が築けたのが、調子乗り世代の一番のいいところだったと思います」と、オンとオフの切り替えが上手い世代だったと語った。

 この「調子乗り世代」というネーミングについては、「ほかの年代を見ると、だいたいかっこいいじゃないですか。『黄金世代』とか、『プラチナ世代』とか。いろいろあるなかで『調子乗り世代』って、面白い感じがしますし、絶妙なネーミングですよね。『誰がいるの?』って聞かれて、このメンバーの名前を言えば、みんなが納得しますよね(笑)。たしかに調子に乗っている感じのメンバーですから」と、笑った。

 彼らとピッチ内外で強い関係性を築いていたという森脇だが、引退発表については「まったく相談されないんです」と、肩を落とす。

「本当に、結果発表みたいな感じなんですよ(苦笑)。槙野とか柏木なんかは、もう小学校の時ぐらいから対戦していて知っているんですけど、僕はメディアの報道で引退を知りました。報道を見て『言ってくれよ』って電話をしたら『サプラーイズ!』って言われました。もう、『そんなサプライズいらないよ』って返しましたけどね(笑)。槙野の時も、うっすらとは聞いていたんです。でも、『決断したら、俺も心の準備がいるから教えて』と言っていたんですが、引退決定は報道陣のみなさんを通じて知りました。僕に言うと、みんなに広まると思われているのか、もうちょっと信用してもらってもいいんですけどね」

森脇が今季のターニングポイントに挙げる開幕戦大敗後のリバウンドメンタリティー

 森脇と同年代で、今も現役でプレーしている選手としては浦和レッズのFW興梠慎三、FC東京のDF長友佑都や川崎フロンターレのMF家長昭博といった名前が挙がる。決して多くはないが、まだまだチームの中心として活躍を続けている。

「そういう選手たちからは、勝手に僕は刺激をもらっていますし、まだまだ負けられないっていう思いが強いですね。『調子乗り世代』のスーパースターたちが引退していくのは本当に寂しいし、『まだまだできるでしょ』『まだやって、もっともっとファン・サポーターを魅了してよ』って思うんですけどね」

 まだ現役を続ける意向を持っている森脇は、自身のYouTubeチャンネル「森脇良太の誘ってんじゃんTV」を開設している。だが、「まだセカンドキャリアに向けて、そこまで大きな準備はしていない」と言う。

「30歳を過ぎた頃から、いろんな方に『準備しておけよ』と言われていましたし、やりたいことのイメージはいくつかあるんですが、まだ漠然としています。YouTubeチャンネルも、しゃべる勉強になると思ったことがきっかけの1つですし、配信している動画の編集も、途中までは自分でしています。パソコンを使えたほうがいいですし、指導者になったらプレーの映像を編集することもあると思うので。空いている時間でそういうのを勉強したいなと思っています。それくらいの小さい準備はしているのですが、ちゃんとした準備ができているかと言えば、そうではないと思います。でも、もう37歳になってこの先に何年もできるとは思っていないので、次のキャリアや引退をどう迎えるかは、しっかり考えないといけないと感じています」

 J1、J2、J3とすべてのカテゴリーのリーグ優勝を含め、数々のタイトルを獲得してサッカー選手として大成功を収めてきた森脇。引退後にどんなセカンドキャリアを歩むことになるかも注目だが、まだまだピッチで躍動する姿が見たいところだ。

[プロフィール]
森脇良太(もりわき・りょうた)/1986年4月6日生まれ、広島県出身。広島ユース―広島―愛媛―広島―浦和―京都―愛媛。J1通算302試合・19得点、J2通算123試合・9得点、J3通算34試合・0得点、日本代表通算3試合0得点。豊富な運動量と卓越したビルドアップ能力で数々の試合に出場してきた大ベテラン。ムードメーカーとしてもチームに不可欠で、史上3人目となるJ1、J2、J3の全カテゴリーでタイトルを獲得した。人気を誇った“調子乗り世代”の1人でもある。

(河合 拓 / Taku Kawai)

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