浦和MF中島翔哉が来季巻き返しへ 最終節ゴールに垣間見た本来のポテンシャル…新体制での適応が鍵か【コラム】
高い期待を受けて今夏補強で浦和へ加入
浦和レッズのMF中島翔哉は、今夏の登録ウインドーでチームに加わったものの不本意な形でリーグ戦の戦いを終えた。負傷離脱がありつつも、最終節で浦和加入後の初ゴールを記録。来季の巻き返しが注目される1人だ。
浦和は今季マチェイ・スコルジャ監督が就任し、4-2-3-1システムをプレシーズンから固定的に採用した。そのため、2列目には攻守に関わる献身性を前提にしながら、最終的にゴールに関わる部分での仕事が求められた。
なかでも昨季加入でリーグ20試合8ゴールした「10番」の元スウェーデン代表MFダヴィド・モーベルグは、指揮官がプレシーズンのキャンプから右サイドハーフの位置で優先順位の最も高い選手として計算していることが明らかだった。しかし、シーズンが始まると不振を極め、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の外国人枠の関係もあり出場機会が減少。最終的に、今夏にギリシャへと旅立っていった。
ほかにもMF大久保智明、MF小泉佳穂、MF安居海渡といった2列目で起用されてきた選手はチーム戦術への貢献とは別に、得点数の点で厳しかった。スコルジャ監督は今年6月に「浦和レッズのような野心的なビッグクラブは、6か月ごとに新たな血を注入するのも必要かと思う。そのような意味での、クラブの良い動きにも期待したい」とコメント。さらに「この6か月で最も悪いところはどこかと聞かれれば、攻撃の時のチームとしての連係だろう。先ほどフレッシュな血を注入する話があったが、今チームでどこにそれを必要としているかと言えば前線だろう」と、補強の必要性を訴えていた。
そして浦和が期待とともに獲得したのが中島だった。土田尚史スポーツ・ダイレクター(SD)は「このタイミングで中島選手が入ってきたポジションは補強ポイントですし、今シーズンが始まってからずっとリストアップをしてきました。そのなかで今シーズンの浦和レッズの立ち位置、目指すところはJ1リーグで優勝。そこに向けてのメッセージだと思っていただければと思っています。天皇杯、ルヴァンカップも狙わなければいけないタイトルです。日本でのシーズンが終わった後にはクラブ・ワールドカップ(W杯)があります。その辺りも視野に入れての補強です」と明言していた。
怪我での離脱から調子が上がらず…最終節で浦和加入後の初ゴールを記録
実際に「10番」を引き継いだ中島がチームに加わって、シーズン前半戦とは少し違う近い距離間でボールを交換する場面も生まれ、大久保は「懐かしい感じがあって、自分もそういうのは忘れてたなと、日々の練習から思い出す感じがします」と話し、小泉もそのような意見について「それはあるかもしれない。距離感の話なのか、リズムの話なのか、トモ(大久保)にしても僕にしても一番の良さが出やすいような距離感とかリズムとかでボールが触れる」と話すなど、相乗効果も期待された。
しかし、コンディションを上げつつあった9月6日のルヴァンカップ準々決勝のガンバ大阪戦で中島は接触プレーにより負傷。10月末にようやく復帰したがプレーは本調子ではなく、12月3日のリーグ最終節、北海道コンサドーレ札幌戦で左足シュートによる浦和初ゴールを決めた試合後に「最近まで左足でシュートを打っていなかったけど、やっと調子が良くなってきた」と話したほど。本領を発揮する場面は訪れなかった。
それでも、その札幌戦で決めたゴールは自陣からのフリーキックをFWホセ・カンテに当て、浮いたボールに反応した中島が相手DFを抜き切らずにシュートを決めたもの。美しく崩したようなゴールではないが、こうしたシュートでゴールを奪える選手こそ今夏に求めたもの。その意味では、本人にとってはもちろん、浦和やスコルジャ監督にとって、あるいは周囲の選手にとっても9月は痛い負傷離脱だった。
この後にはまだクラブ・ワールドカップ(W杯)の戦いを残し、来季はノルウェー人のペア・マティアス・ヘグモ新監督の就任が決まっている。4-3-3システムを好むとされる指揮官の下で、中島は日本代表で輝きを見せたような左サイドでのプレーを求められる可能性もある。本人は「ドリブルもどんどん出していきたい」として、起用ポジションは「監督が決めるので、言われたところでやる」と話した。本来持っている能力は間違いないだけに、今季は期待を大きく下回った印象になってしまったが、プレシーズンから準備のできる来季が注目される1人だ。