策におぼれたリバプール 宿敵マンU戦での大敗に見えた采配の混乱

「哲学」か「迷走」か、「復興」か「解任」か

 アレンのもたらした悪影響はそれだけではない。不慣れなボトムの役職により、中途半端なポジショニングに終始し危機を招いていたことで、トップ下に入っていたMFスティーブン・ジェラードに懸念材料を与えてしまった。アレンをケアする意識が芽生え、やや深めの位置取りに徹したことが結果として持ち味を殺し、その存在感は試合から消えてしまった。

 そしてヘンダーソンは、初となるウィングバックの位置に戸惑いを隠せず、2失点目に絡んでしまう。相手MFアシュリー・ヤングとの1対1で縦の仕掛けの切り返しに裏を取られ、そのクロスから相手FWロビン・ファン・ペルシーが触ったボールを最終的に相手MFフアン・マタにヘディングで押し込まれ、追加点を与えてしまった。

 だが、確かに軽い守備で簡単にクロスを上げさせてはしまったものの、その後のセンターバックの対応にも問題があった上に、持ち味を全く活かせないポジションに置かれたヘンダーソンを責めるのは難しい。それは本来の役職ではない1トップを務めたFWラヒーム・スターリングにも同じことが言える。

 初先発に選ばれたジョーンズは、1失点目、3失点目で完全に逆を取られており、早いタイミングで飛び込んでしまう難点が最後まで改善されることはなかった。後半38分にFWマリオ・バロテッリとのボックス内での1対1での局面で、あえて股を通すシュートに誘い込んでセーブするなど、落ち着いた対応で危機を救い続けた相手GKダビド・デ・ヘアとのレベルの差をまざまざと見せつけられた形だ。

 これまでリーグ戦6勝3分6敗と苦戦を強いられてしまっているチーム事情で、何かを変えなければいけなかったのは事実である。しかし、結果論にはなってしまうが、各選手を不慣れなポジションに配置することで持ち味を消し、経験値が皆無に等しいシステムでチームの混乱を招き、崩壊に陥れてしまったのも、また事実である。

 これで早くも敗戦数は「7」となり、昨季の敗戦数をわずか16試合で上回ってしまった。最も温かいサポーターと言われるKOPも、ついにその我慢が限界に達しており、監督解任の声が溢れ出てきている。戦術家として知られるロジャース監督は今、「哲学」と「迷走」という、紙一重の分岐点に立っている。行き着く先は「復興」か「解任」か。一つ言えることは、残されている時間はわずかであるということだ。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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