J1昇格へ明暗分けたPK判定「非常に難しい」 識者が言及、浮き彫りになったVARの機能性「一番大事なのは…」

明暗を分けたPKシーンに注目【写真:Getty Images】
明暗を分けたPKシーンに注目【写真:Getty Images】

J1昇格プレーオフで明暗を分けたPKシーンに注目

 スポーツチャンネル「DAZN」の判定検証番組「Jリーグジャッジリプレイ」で、12月2日のJ1昇格プレーオフ決勝、東京ヴェルディと清水エスパルスの試合が取り上げられた。ここでは、東京Vに与えられたPKの判定について妥当か否かが議論になった。

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 後半アディショナルタイム、東京VのFW染野唯月が清水のDF高橋祐治からペナルティーエリア内でスライディングにより受けた接触を、池内明彦レフェリーはPKと判定。このゲームではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)も導入されていたが、判定が変わることはなかった。

 染野の左足にスライディングした足が接触したのは明らかな一方で、染野が相手方向に足を出すイニシエート(接触の誘発)にも受け取れる場面であり、そのPKによる1点がJ1昇格チームを分けたこともあって大きな判定になった。

 ゲスト出演した元日本代表MF藤本淳吾氏は、「オフェンスの選手としては誘って足を出す場面があるはあるというか、もらいにいくではないけど、取ってくれたらラッキーというか」と、染野のプレーを解説。そのうえで「本当にPKなのかなという疑問はある」と話した。

 同じくゲスト出演した元日本代表DF駒野友一氏は、まずプレー選択について「状況的に考えてゴールに向かっていないドリブル。無理していく必要はなかったのかなと思う」とコメント。ただし、判定については「本当に難しいところで、FWの選手がどういう考えで左足を出したのかは考えないといけない。左足を出してボールをコントロールできたのかというのもある。身体よりボールが離れてしまっているのでファウルではないのかな、というのもある」と話した。

 元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は「(レフェリーの間でも)5-5、6-4、4-6と判断の分かれる非常に難しい(プレー)」と話し、「映像でもファウルっぽく見えるものと、そうでないものがある。個人的にはどちらかというと、ノットファウルのように感じる。左足を軸足にして右足でボールコントロールするというよりは、タックルに対するブロックに感じるので、イニシエートという動きの印象を持つ」と話した。

レフェリーのポジショニングと、VARの役割を踏まえたうえで解説

 一方でピッチ上のレフェリーとVARの判断について、家本氏はまずレフェリーのポジショニングについて「(レフェリーは)コンタクトを斜め左後方から見ている。左足がDFの方に動いているのを見るためには真後ろの方向、もう少し右5メートルくらいに行かないと正確な情報をキャッチできない場所にいた。展開的に悪いポジションではないけれども、アタッカーの足の動きがDFの方向に向いていることが感じにくい」と話す。

 ただVAR判断の是非については、過去の事例との比較として「一番大事なのは現場でレフェリーたちがどう判断したか、それを覆すだけの決定的な映像があるか」として、「このシーンは主審がイニシエートという認識がなくファウルタックルと認識した。アングルによってはファウルタックル、足とボールをもろとものタイミングでチャージしたと見える映像がある。VARが『イニシエートしている』と言えないシーン。レフェリーがPKと判断したら、それをフォローせざるを得ないシーン」と話した。

 そして、現行のルールについて家本氏は「多くの人がVARの存在意義は判定の正しさではないかという意見が増えているという認識がある。その気持ちは分かるが、VARの仕組みは正しさの追求ではない。正しさで言えばそういうロジックになるが、FIFA、IFAB、JFAもそうだけれども、そこではなく、あくまでもレフェリーがどう判断するか、それを決定的に覆すと言えるのか。アングルによってファウルタックルに十分判断できる映像がある以上、ハッキリした明白な間違いの映像があると言えないので、その正しさを追求する役割ではないのでフォローするということになる」と、主審のアングルとVARが持っている情報の差が存在するとはいえ、現行の仕組みでは判定を覆すまでに当たらないと解説していた。

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