ドイツで成功する「日本人サッカー選手の共通点」 現地クラブ職員が明かす評価ポイント「言葉以上に…」【インタビュー】

現地クラブスタッフが考える日本人選手がドイツで成功するために必要な要素とは?【写真:Getty Images】
現地クラブスタッフが考える日本人選手がドイツで成功するために必要な要素とは?【写真:Getty Images】

デュッセルドルフ日本人職員が言及「その人が持つプロフェッショナルな部分が重要」

 ドイツのサッカークラブでは、これまで多くの日本人選手が活躍し、現在も研鑽を積んでいる。ドイツで成功を収めてきた日本人選手の共通点はあるのか――。現在ドイツ2部フォルトゥナ・デュッセルドルフで、フロントスタッフとして活躍している廣岡太貴氏は、自身の経験を基に「こっちで長く活躍している人は、周りから尊敬されるような選手が多い」と語っている。(取材・文=中野吉之伴/全5回の2回目)

   ◇   ◇   ◇

 ドイツで成功する日本人選手の共通点はなんだろうか。選手だけではなく、指導者、トレーナー、メディカルやフロントスタッフとして活躍する日本人も少しずつ増えてきている。

 ブンデスリーガ2部フォルトゥナ・デュッセルドルフでスポーツ&コミュニケーション部日本コミュニティーマネージャーを務める廣岡太貴(33歳)は、デュッセルドルフの選手やスタッフだけではなく、他クラブで活躍する日本人とコンタクトを取る機会が少なからずある。

 そんな廣岡から見て、日本を出て欧州でポジションを勝ち取り、さらに長く欧州でプレーし続けている選手の共通点はあるのだろうか。

「やっぱり人間性というのはあるでしょうね。言葉も大事かもしれないですが、言葉以上にその人が本当に持っているプロフェッショナルな部分が重要なんだと思います。こっちで長く活躍している人は、もちろんパフォーマンスが優れているというのはありますけど、生活の部分も含めて人間としてのあり方が本当にしっかりしていて、周りから尊敬されるような選手が多いと思います」

 デュッセルドルフでプレーする日本人トリオはどうだろうか。アペルカンプ真大、日本代表MF田中碧、U-22日本代表DF内野貴史とは、クラブ内だけではなくプライベートでも接点が多い廣岡は、「もちろん人それぞれで特徴はあります」と前置きしたうえで、次のように語る。

「田中選手に関してはサッカーのために生きているんじゃないかなっていうぐらい、基本的にグラウンドと家との行き帰りという印象があります。外食とかもあまりしない。真大に関しては、こっちでずっと育っているのでちゃんと自分の空間を持っている。内野は内野でちゃんと自炊もできるし、1人暮らしでかなり頑張っていますね。

 田中選手には田中選手のやり方があるし、真大には真大の、内野には内野のやり方があります。でもみんな本当に人間性が素晴らしい選手たちだと思います。上の世代のいい選手たちを見ているから、自然と身に付いているんじゃないかと思うんです。田中選手は日本代表でそういった選手たちを見ているだろうし、内野も今U-22代表で刺激を得ている。真大はU-21ドイツ代表に入ったり(A代表出場歴はないため、日本代表の選択も可能)。あとはみんなクラブでもベテラン選手と一緒にやってきているので、そこで培っているものもたくさんあると思います」

デュッセルドルフでフロントスタッフとして活躍する廣岡太貴氏(右)【写真:F95David Matthaus】
デュッセルドルフでフロントスタッフとして活躍する廣岡太貴氏(右)【写真:F95David Matthaus】

抜擢で訪れたチャンスを確実に掴み取った内野貴史「本当に凄いと思います」

 海外移籍する選手全員が、プロクラブへとたどり着けるわけではない。誰もが自分の夢を抱いて海を渡るし、ステップアップを願っている。自分を律し、成長と向き合い、やれるだけのことをやっても、夢潰えて次の道を探す選手も少なくない。

 廣岡にしても、最初は選手としてのキャリアアップを願ってドイツへ渡った人間だ。チャンスが掴めそうで掴めない悔しさ、やるせなさをよく知っている。だからこそ、そうした困難を乗り越えてきた選手たちを心からリスペクトしている。

「例えば、内野は本当に凄いと思います。コロナ禍でチーム内にクラスターが発生し、トップチームの選手が足らなくなったことでU-23にいた内野らが抜擢されたことがありました。あそこで出場しただけではなく、しっかりと自分のパフォーマンスを発揮して活躍し、チャンスを掴んだ。それまでにもU-23チームでポジションを確保して、4部リーグでコンスタントに活躍していたというのは、ドイツ国内で確かな評価がされるポイントでした」

 それぞれの選手にそれぞれの物語がある。そしてそれぞれの選手にはたくさんの支える人がいる。プロスポーツとはそんな多くの人の思いが重なり合った劇場なのだ。

(文中敬称略)

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

page 1/1

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング